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がんばりすぎずにあるこうや。

Jユースカップ2回戦 未来への希望を探して

2011 Jユースカップ 第19回Jリーグユース選手権 決勝トーナメント
2回戦 ジェフユナイテッド市原・千葉U-18●1 (4 PK 5) 1○柏レイソルU-18

ジェフのユースチームが、鹿島やFC東京という強豪チームのいる予選リーグを勝ち抜き、見事決勝トーナメントに進出した今大会。トーナメントの初戦が日立台での千葉ダービーということで、ちょうど祝日ですし行ってみることにしました。来季トップチームに昇格する2人や、大木さんが3年かけて作っているチームがどんなものなのか、また現状千葉でNo.1のチームである柏U-18のサッカーにも興味ありましたしね。

では、アウェイの地に乗り込んだ若きジェフのスタメンをご紹介します。GKに白川。4バックは右から、吉永、鈴木裕喜、石原、豊川。中盤は佐藤祥と長野祐希が並び、その前に井出遥也が陣取る三角形のトレスボランチ。前線に佐藤遵樹、今関、仁平のスリートップです。来季トップチームに昇格する2人はともにスタートから登場。ベンチには"スーパーサブ"和田凌や、ヴィヴァイオ船橋から移籍の中学3年生・仲村京雅もいます。

力の差は歴然と思われた柏U-18との試合は、予想に反してPK戦までもつれ込む接戦になりました。序盤からボールポゼッションはジェフが上回っていて、中盤でのショートパスワークからサイドに展開し、そこからカットインしてゴールを狙うというのが多く見られたパターン。クロスからのフィニッシュはそれほど見られませんでした。柏の守備ブロックが不安定なうちは何度かボックスに侵入してゴールも狙えたんですが、しかし一瞬の躊躇や消極的なプレーがあったりで得点には至りませんでした。しばらくすると柏もジェフの攻撃にしっかり対応して、真ん中をしっかり固めるブロックを作って守り、センターラインの今関と井出には厳しいフィジカルコンタクトをかけて仕事をさせず、それまである程度通用していたジェフの攻撃パターンは完全に封じられました。ポゼッションは取っていましたけど、ブロックの外側でまわしているだけなので、さして効果的とは言い難かったですね。

先制点は柏。何本かのダイレクトパスでジェフのバックラインを翻弄し、最終的に右サイドから荒木が抜け出してGKと1対1になり、狙い澄ましてゴールイン。柏のトップチームの試合を見ていても思うことですが、前線の選手がフリーでボールを受けてそのまま決定的なチャンスになるシーンがすごく多いですね。視野が広いのと意思疎通がしっかりしているのかな。またそれが、トップとアカデミーで同じように見られるというのが興味深い。柏はトップチームからアカデミー、スクールまで、共通した指導方針とコンセプトで一貫した指導をしているということですが、「しっかり育ててレイソルの戦力を作る」という確固たる信念があるということ。柏では酒井や工藤、茨田といったアカデミー出身の選手が大活躍していますが、同じサッカーを目指しているわけですから、それもうなずける話です。

後半のジェフはパスワークのテンポの良さに磨きがかかり、加えて中盤での激しいプレッシングがかなり効くようになっていて、スリートップの強みを活かせるようになりました。とりわけ右ウィングに入った佐藤遵樹のテクニックはなかなかの見もので、バックラインの裏にスッと抜け出してチャンスになるシーンがたくさん。利き脚の右に比べて左の精度はいま一つということでしたが、しかし今回は左脚でのシュートを積極的に打っていきました。ゴールネットを揺らすことはできなかったものの、非常に可能性を感じさせてくれるアタッカー。まだ2年生ですから、もう1年でしっかり力をつけて、将来ジェフの右サイドで思う存分活躍してもらいましょう。

来季トップチームへの昇格が決まっている2人、佐藤祥は中盤でそのフィジカルの強さを存分に発揮し、柏の攻撃の芽を摘み取り続けました。身体でドンッと当たってボールを奪い、強い芯でバランスを崩さず、チェックをかいくぐってフリーになると素早く前を向いてアタッカーへボールを展開する。また試合終盤になっても前に後ろにボールを追いかけ、ジェフのセンターラインを支え続けました。見事な活躍。今回はユースが相手ではありましたが、プロに行ってもからっきし通用しないなんてことはないんじゃないでしょうか。もう一人、エースの井出はいまひとつリズムに乗り切れない感じで、軽い身のこなしは魅力ですが、しかし相手に読み切られる場面も少なくありませんでした。もちろん柏も井出を警戒していて、激しいコンタクトを受けて負傷し、後半途中に交代することになってしまいました。これ以降ジェフが全く攻められなくなってしまったことを考えても、井出による部分は大きかったのかな。これまで「遥也で勝ってきた」ということですしね。

他にも良い活躍をした選手はいるんですよ。たとえばボランチの一角に入った長野は、両サイドバックが前がかりになって守備が手薄になった際に、佐藤祥と一緒にセンターラインを締めつけて相手の攻撃を遅らせたり、またボールを奪ってからは適度にタメを作って前後のバランスをとったりと、地味だけど的確な仕事ぶり。左ウィングの仁平は前線でガンガンボールを追いかけてチャンスを作り、脚を攣りながらも和田と交代するまでしっかり走りきりました。センターの今関は前後に動いて基点になり、また値千金の同点ゴール。終盤は孤立しながらも柏のセンターバック2人を相手にしっかり食らいつきました。長野と仁平は3年生でこのあとはおそらく大学へ進学することになるでしょうが、その活躍が楽しみです。

柏U-18については、前述の意思の共有や組織力もそうなんですが、やはり個々人の能力・与えられた役割をしっかりこなす力がずば抜けている。特に目についたのは、中盤に構える5番の小林祐介くんと8番の中川寛斗くんの2人です。小林くんは、守備ブロックの中にポンとできた危険なスペースを素早く察知して空間を埋め、ボールを奪う能力も高く、柏の中盤に大きな安定感をもたらしていました。中川くんは、攻撃のスイッチを入れるレジスタタイプ。狭い範囲をよく動いてボールをもらい、素早くルックアップしてベストの選択をする、できる選手です。中川くんと右ワイドにいる19番の荒木くんのラインが完璧で、この2人で何度もチャンスを作られました。柏U-18の大心臓を支える2人は、近い将来プロの舞台でも見られるんじゃないかな。良い選手が揃ってますね。

寒くて雨も降って屋根がなくて、観戦にはなかなか厳しい環境でしたけど、しかし大変に面白い試合を見せてもらいました。ユースの試合を見たのはこれが初めてなんですが、これを長いスパンでちゃんと継続させていけば、必ずトップチームの強くなれるだろうと思いましたよ。サッカージャーナリストの西部謙司さんがラジオで語った「ユースから1年に2人づつトップに昇格すれば、フィールドが全員入れ替わるまでに5年」という構想は、あながち的外れではありません。それまでは辛くて苦しくて吐きそうな時間でしょうが、腰を据えて力をつけるためには必要な時間なのかも。僕らも歯を食いしばらないといかんのだろうな。

[J Sports Jリーグブログ]Jユ-スカップ決勝トーナメント2回戦 柏U-18×千葉U-18@日立台