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がんばりすぎずにあるこうや。

天皇杯1回戦 粘り勝ち

第92回天皇杯 全日本サッカー選手権
1回戦 筑波大学○3 a.e.t. 1●FC琉球

関東開催のJ1と迷った結果、早い時間帯の天皇杯を見に行くことにしました。JFLや大学リーグの試合はなかなか見に行くことが出来ないし、地元の筑波大が出るし、琉球には名の知れた選手も多くいるし、いろいろとうまくハマッたカードになりましたのでね。スタジアムについた途端にサァーッとスコールみたいな雨が降ってきましたが、すぐにやんだあとはカッと暑いタフな陽気になりました。9月とはいえ、この時期のデーゲームはなかなかムチャですよな、やっぱり。

では過酷な県予選を勝ち上がってきた両チームのスタメンをご紹介します。
まずホーム扱い、茨城県代表の筑波大学は、GKに岩脇。バックラインは4人。右から、早川、不老、車屋、片岡。ボランチに松田と谷口、2列目には上村、玉城、曽山が並び、最前線に絶対エースの瀬沼です。
対する沖縄県代表のFC琉球は、GK森本以下、吉田、大澤、笠松、レフトバックは大分から加入の内田昂輔。田中靖大と小寺のダブルボランチ、その前に昨年は水戸で活躍した小幡純平。前線は右に棚橋、左に永井秀樹、中央に高橋駿太のスリートップです。

昨年の天皇杯で大活躍した筑波大の赤崎はベンチスタート。琉球我那覇和樹は直前の練習で熱中症を発症したようで、大事をとっての登録外だったようです。元湘南の寺川能人も登録外。実はジェフにいたGKの中牧大輔琉球にいるんですが、こちらも出番が得られていないようです。

地力に勝る筑波大は、中盤からしっかりビルドアップすることを心がけて試合のペースを掴もうとしていました。右サイドの早川と上村、中央の玉城を軸にして、平面でじっくりとパスをつなぎ、琉球の守備を切り崩していくチャンスをうかがっていました。が、琉球はそれを受けようとはせず、ミドルサードから相手を上回る人数でプレスをかけ、相手がボールをロストすると一気にプッシュアップ。トップの高橋を走らせるべく低く速いロングボールを蹴って、鋭く相手のゴールを陥れようとする。平面の追いかけっこは普通はなかなかチャンスになりづらいんですが、これがなかなか効いてました。高橋のスピードに筑波大のセンターバックが追いついていけないんですね。後ろからは棚橋や小幡がしっかりついてきてフォローに入り、こぼれ球からフィニッシュを狙おうと待ち構えている。こういうパターンがしっかり出来上がっていました。戦い方を徹底した両チームですが、形を作るのは筑波大でも、チャンスの数では琉球のほうがずっと多かったですね。

ただ、琉球も実際"それしか"やりようがなかった、という見方もできます。筑波大のセンターライン、センダーバックの不老とボランチの谷口が非常に利いていて、ハイボールは全部このふたりが的確に跳ね返してしまうんです。不老はスピードではかなわなくても、読みとカバーリングのセンスが抜群で、最後の決定的なフィニッシュだけはさせなかった。磐石の守りで安心感をもたらしていました。しかしながら、攻撃陣がそれを信頼しきれずに押し上げ切れなかったというのは残念です。

先制は琉球。ボックスの外、左45度から、右足で巻き気味に蹴ったコントロールショットは、ゴールの隅にきれいに吸い込まれていきました。お見事なゴールでしたね。リズムとしては劣勢な中でもぎ取ったゴールでしたから、チームに大きな勇気を与える1点になりました。昨年は水戸にいてこの日も水戸から多くの応援が駆けつけて拍手を受けていました。凱旋ゴール、ということになるのかな。

琉球は後半からオーソドックスな4-4-2にシフトしていました。棚橋が高橋とツートップを組み、ワイドによく動いてボールを引き出そうとしていました。高橋のスピードも衰えなく、この2人を囮にして後ろからミドルを狙うというシーンも。これが惜しかったんですよ。小幡と小寺が1本づつ放った見事な弾道のシュートは、なんといずれもクロスバーにヒット。他にも高橋がフリーで狙ったりもして、リズムとしてかなりイーブンに近いところまで押し込んでいました。が、結果的にこういうところで追加点を奪えなかったことが後で大きく響くことになってしまいましたね。

この状況を受けて筑波大は、レフトバックの片岡に代えて切り札の赤崎秀平を投入し、谷口を最終ラインに下げてツートップに変更します。これが当たりました。それまで瀬沼が密着マークを受けてまったくターゲットの役割を果たせませんでしたが、ターゲットは2枚になったことでプレッシャーが分散し、高い位置でボールが収まるようになったわけです。上村と、前半のうちに交代出場していた中野の両サイドハーフも高い位置で攻撃参加する回数が増え、フィニッシュのチャンスが多くなりました。シンプルに瀬沼の高さを生かそうとするクロスも徐々に増え、琉球の勢いを押し返していきます。84分の同点ゴールはそういう粘りが生んだ結果でしょう。もちろん運も味方したことは間違いないでしょうが。

1点を守りきる覚悟で77分に交代カードを切り終えていた琉球には、あまり出来ることが残っていませんでした。逆転ゴールを防ぎつつカウンター一発を狙い、追加タイムには左からのマイナスのクロスを小幡がドフリーで蹴りこむだけ、というシーンもあったんですが、これを大きくふかしてしまって万事休す。延長戦は筑波大に押し切られるまま防戦一方になり、中野に2ゴールを許して敗退となりました。

目に付いた選手を何人か。筑波大のNo.10、玉城は面白い選手ですね。中央でボールを持って、相手のプレスを巧みにかいくぐってボールを運べるテクニシャンタイプ。前半はいまひとつ積極性を欠いていましたが、後半はスペースが出来て動きやすくなったのか、ずいぶんはつらつとプレーしていました。ああいう選手がいると攻撃の幅も広がりますね。それから先にも書いた3番の谷口。彼はいい。高いし巧いし周りも見えてるし、磐石の守備をガッチリ支える素晴らしい選手だと思いました。交代出場した琉球の富所も、ワイドによく動いていましたね。器用ではないんですが、いいテンポでボールを引き出してすぐにゴールに向かおうとする。そういう姿勢が好印象です。

柏U-18出身の相馬大士は64分に途中出場。ボランチに入って、相手の攻撃へのファーストチェックをきっちりとこなしていました。とにかくガツガツ当たっていくんですよ。ハードチェックでファウルをとられることもしばしばありましたが、あそこできちんきちんと相手を締め付けてくれると後ろは楽ですね。攻撃面でも、鋭い縦パスを何本か通したりしてました。19歳。若者らしくガムシャラに動き回っておりましたよ。

今回の会場になった笠松運動公園陸上競技場は、東日本大震災で甚大な被害を受けてずっと復旧工事が行われていました。実はまさにこの日から利用が再開され、この試合が復旧後最初のゲーム。トラックもスタンドもきれいに直って、見事に生まれ変わりました。1年半もの長い時間がかかった復旧工事ですが、運動公園のほかの施設にはまだ再開されていないものも多数残っています。地震で受けた被害は非常に大きく、元に戻るにはまだまだ長い時間がかかるでしょうが、しかし確実に復旧は進んでいます。へこたれるわけには、いかんのだよ。