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がんばりすぎずにあるこうや。

【ネタバレあり】ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 「わけわかんない」の正体

久しぶりに映画を見てきました。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」です。日曜日と平日のレイトショーで、合計2回見ました。僕の行った映画館ではもう先週で公開終了だそうで、これだけ話題の作品でも3週間で終わってしまうんですねぇ。たしかに「思ったほど人が入ってない」という印象ではありましたが。

SNSや各blog、2chまとめなどでもいろいろと議論考察が賑わっている今回のエヴァですが、2回見て個人的にもなんとなくつかめた感があるので、アタマの中を整理する意味でも書き留めておこうと思います。考察というほど大層なものではないですよ。まぁ感想がいいとこですね。

以下、作品のネタバレを含みますのでご注意ください。たたみます。 

まず単純な印象から。めっちゃ面白かったです。僕は満足ですね。スピード感も迫力もシリアスさもメッセージ性も不思議さも「なんじゃこりゃ!」感も、すべてが"ちょうどいい"と思いました。「エヴァを見たな」っていう感じ。

多くの人が言っていることではありますが、「この1本だけで物語の結論は出ない」ということは確かですね。明らかに話が終わっていない。これまでの新劇場版では、「序」ではヤシマ作戦で第6の使徒を撃破、「破」では第10の使徒を倒して取り込まれたレイを救出、というように、いずれもシンジくんの手によって一定の"決着"をつけて終わっています。対して今回の「Q」は、カヲルくんが2本のロンギヌスの槍エヴァ第13号機を突き刺して自害し、マリがシンジくんのエントリープラグを強制射出させてフォースインパクトを止めたところで終わっています。シンジくんは何もしていないんですね。なので、シンジくん自身の手で決着をつけるまでは物語は終わらないでしょう。新劇場版はもともと三部作だったものが、この「Q」が長くなったために四部作に切り替えられたという話もありますので、いずれにしろ次の「シン」を見ないと物語の全体はわからないでしょう。

金曜ロードショーでも公開された冒頭7分間の「US作戦」は、大変迫力のあるものでした。改2号機と8号機による初号機捕獲作戦ですが、宇宙空間での細かい物体の動きもきちんと再現されていてなかなか見ごたえがありました。このシーンの宇宙工学的な考証が、首都大学東京宇宙システム研究室のWebサイトに公開されていましたが、こういう空想科学はとても面白いですね。僕自身、宇宙開発関係の仕事をしたこともあるし興味もあるので、とても面白かったです。S-ICやその他の外郭ユニットをを分離したときに、その本体だけでなくて多数のアタッチメントパーツがバラバラと飛散していきましたけど、あれどうなるんですかね。宇宙屋としてあんまりデブリ増やしてほしくないんだけども。

続く戦艦「ヴンター」(Wunder)の起動シーンは、これは最高にカッコよかった。個人的にはここが今作のハイライトです。僕は管制のやり取りが大好きなんですけど、ミサトさんが第一戦闘配備を宣言したところからの流れはホントに圧倒されました。バックで流れる音楽も壮大で良かったです。あの曲は「不思議の海のナディア」のノーチラス号のテーマ曲だそうですね。エンジン点火のためのシステムが整備できていないから、エヴァ2号機を使って無理やり点火させてしまおうというこの発想、なんともエヴァらしい無茶っぷりで良いじゃないですか。ヴンターが起動して空に浮いたときには思わず「(゚Д゚)ほぁー・・・・」と口をあんぐり開けて見ていましたw ヴンターはメインエンジンに回収したエヴァ初号機が使われているということですし、360度の球体スクリーンを装備したコクピットや起動シークエンスでの映像の移り変わり、"LCLガス"が充電されていることなどを考えても、あれはもう「超デカいエヴァ」そのものですな。"LCLガス"という単語の矛盾は、目をつぶっておくべきなんだろうかw

それからヴンター内での面会と、レイ(のようでレイじゃないヤツ)に連れられてシンジくんが旧ネルフ本部に逃走、その後カヲルくんと出会って色々あるわけですけど、このへんは正直「よくわからない」ので何とも言えません。シンジくんもミサトさんに向かって「わけわかんないよ!」と激高していましたが、このシンジくんの"わけわかんなさ"というのは、見ている僕らが感じた「なんじゃこりゃ?」感と同じだと思うんですよ。基本的にヴィレの面々はシンジくんに対して何も説明してなさすぎで、目がさめて大きく状況が変わっている(らしい)なかでいきなりあんなぞんざいな扱いを受けて、そりゃ反発して当たり前です。対してカヲルくんは、残酷な事実を見せながらも、現在の状況とこれから先に起こりえること、シンジくんがどうするべきなのかを丁寧に話してくれるわけですから、シンジくんにとってどちらが信用に足るかといえば、そりゃ火を見るより明らかです。「エヴァに乗るな」っていわれても何で乗っちゃいけないのかわかんないしね。ヴィレの人たちからすれば、サードインパクトの引き起こして世界を壊滅させたシンジくんとは顔を合わせるのすら御免こうむりたいという心境なんでしょうけど、ちょっとかわいそうでしたね。

さて、この「Q」の大きなテーマは「やりなおす」ということだと思います。英題の「You can (not) Redo.」にはじまり、劇中たびたび登場する「世界を元に戻す」というセリフ、次回昨「シン」のタイトルにつけられた「:||]の記号(これは音楽記号で「繰り返しのはじめに戻る」の意味ですね)などなど、いろいろとそれを示唆する要素はちりばめられています。もしかすると、この「やりなおす」というのは新劇場版全体を通しての大きなテーマなのかもしれませんね。各blogやまとめサイトでは「物語のループ説」というのがまことしやかに議論されていますが、僕にはそこまでわかりません。シンジくんが「失敗しても這い上がって自らの手で決着をつける」という大きな流れに、製作側のメッセージがこめられているのかなぁ、と思います。

他にも色々ありましたよ。トウジの妹のサクラちゃんがヴンターの乗組員として登場しましたけど、サクラちゃんかわいかったですねー!時系列どおり「破」から14年後だとすると20歳前後のはずですが、全然そう見えないw それと整備長としてちらっとでてきたショートカットの女性。あの人あれっきりさっぱり出てこなかったのでなんだったんだと思ったんですけど、あれ伊吹マヤさんなんですね。ネルフでは技術士官としてリツコさんの補佐とメインオペレータやってましたけど、今回はそこからは外れたようです。「これだから若い男はっ!」と愚痴ってましたが、あれはたぶん14年という長い年月が経っているんだぞという示唆ですね。マヤさん自身は全然年取ったように見えませんでしたけども。 まぁでも何よりも、「破」で試験3号機に取り込まれて精神汚染を食らい、再起不能に陥ってしまったはずのアスカが、元気な姿で登場していたのが個人的には大変嬉しかったです。金曜ロードショーでのUS作戦のシーンを見たときには「これをそのまま信じてしまっていいものか?」とたぶんに懐疑的だったんですが、よくぞここまでにしてくれました。「エヴァの呪い」とやらで14年経っても待った容姿が変わっていないそうですが、むしろそれ良し。でも性格はずいぶん変わりましたね。ミサトさんをはじめ上層部にはかなり愛想よく接していたし、マリは「コネメガネ」呼ばわりでしたけど一緒に作戦を遂行する仲間としての意識が大きくあるようでした。「破」のときは「私1人いれば十分よ!」だったのにね。何より驚いたのは、ヴンターに取り付いたMark.09を破壊するために、ほとんど躊躇なく改2号機を捨てて自爆を選んだこと。あれほど愛着があったはずの2号機をあんなにあっさり手放してしまうとはね。ホント14年間のうちに何があったんだろうか。そのへんの話は、次の「シン」で明かされるんでしょうかねぇ。

「シン」は当初2013年公開だったはずですが、公式サイトからは公開時期の記載が消えてしまいました。とはいえ今回も前作からは3年あったわけですし、気長に待つとします。でも前回と違ってかなり中途半端で終わっているので、できれば長くても1年半くらいで公開してくれるとありがたいですね。