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がんばりすぎずにあるこうや。

"ミステリ"のむずかしさ

フジテレビで「すべてがFになる」の実写版ドラマが放送されています。先週から始まりまして、昨日が2回目。このドラマは2話完結の形をとっているので、ようやく1つ目のエピソードが終わったところです。

すべてがFになる」は、森博嗣さんの連作「S&Mシリーズ」の第1巻目にあたる作品で、今回のドラマもこのシリーズを原作にしています。森博嗣作品の映像化というと、2006年の「カクレカラクリ」が真っ先に思い出されるわけです。あれはドエライ酷いもんでしたんで、今回もあんまり期待はしないでとりあえず1話、という感じで見てみました。1話で終わらなかったので2話までは見ましたけどもw

最初のエピソードは「冷たい密室と博士たち」。大学の極低温実験室を舞台にした入れ替わりトリックの話ですが、見てても原作と比べながらってのが全然できなくて苦労しました。原作の中身をあんまり覚えてないんですよ。なにせ読んだのがもう10年近く前なもので、細かいところはさっぱりでした。ところどころ印象的なシーンがあって、それは「あー、これなんとなく覚えてるな」っていう感じではあったんですけどね。入れ替わりのトリックとか犯人同士の関係あたりは覚えてました。つまり、そういうストーリーのコアになるところはしっかり再現されていたということで、もともと期待値が大して高くなかったので、「思ったよりは、まぁ」という印象ですかね。うん。

ドラマ版の主演は綾野剛武井咲。二人とも最近よく推されて出演作が増えている俳優さんですね。個人的にはこの時点で「キャストありき」だなーという印象がどうしてもぬぐえないので、そういう意味でもドラマの期待値が低いんですよね。原作を読んでから時間が経っているので犀川先生も萌絵ちゃんも印象がやや曖昧で、そのあたりのイメージのズレについては何とも。ただ、綾野剛に関して言えば、「最高の離婚」や「ルパン三世」の演技でもどうにも"色がない"というか非常に淡白な印象があって、僕はすごく苦手なんです。そういう部分の気持ち悪さみたいなのはありました。
武井咲は、明るくて笑顔いっぱいなところはとても良かったですね。場面によって表情や印象がまるで違うのがちょっと変な感じでしたが、それくらい。「武井咲」として見れば、僕はわりと好きですw

演出面は、これは「ガリレオ」に似てるのかな。CGやカメラワークは同じような印象を持ちました。どちらもベースが「学問」なのでオマージュしやすかったんですかね。 「冷たい密室」の犯人同士の関係性というのは、このエピソードでは最大級にインパクトのあるところだったと思うんですけど、ここが上手く表現されてなかったのは残念でした。やらなかったのかできなかったのかはわかりませんが、時間的な問題もあるかもしれませんね。

しかし、ミステリーというのはクロスメディアが本当に難しいジャンルなんだなというのを実感します。小説にしろドラマにしろアニメにしろ、それぞれが得意とする表現の形というのがあって、ミステリーはそれらを最大限に活かして作られているものだと思うのです。なので、それを別のメディアに持っていこうとすると、表現方法のミスマッチが起きて、元の物語ほどのインパクトを生み出せなくなってしまう。トリックそのものが成り立たなくなることだってあります。読者視聴者をいかにして騙すというかコンセプトで作られた話は、その形で楽しむのが最適最善で、メディアを変えればどうしたって駄作になってしまうのも、ある意味仕方のないことなのかもしれません。

原作シリーズは全10巻の大ボリュームなんですが、このペースだとドラマでは5つくらいしかできなさそうなので、どういうチョイスをしてくるでしょうね。次は「封印再度」のようで、もうひとつくらい挟んで最後に「F」と「有限微笑」を一気にやるのかな。個人的には「笑わない数学者」が好きだったので、これをやってくれると嬉しいなとも思いますが、果たして。

原作は掛け値なしに面白いし、ボリュームたっぷり読みごたえもあるので、おススメですよ。Kindle版では全巻セットもあって多少お安いので、興味のある方は是非どうぞ。

すべてがFになる (講談社文庫)
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↑でもこのカバーはちょっといただけないよね・・・・