stellacadente.blog

がんばりすぎずにあるこうや。

はじめての歌舞伎座

先日、人生で初めて歌舞伎の公演を見てきました。場所は当然、銀座・歌舞伎座。歌舞伎の公演は、都内でも新橋演舞場明治座国立劇場などいろいろな劇場で行われていますが、やはり見るなら本場。歌舞伎のためだけに作られた専用のステージで見るのが一番と思ってね。

実は昨年の目標のひとつに「舞台演劇をひとつ見に行く」というのをひそかに挙げていたんです。なんですが、いろいろアクシデントもあったりしてチャンスに恵まれず先延ばしに。で、今年こそと思って舞台芸能に詳しい母に相談してみたところ、「4月の歌舞伎座の演目は初心者向きで面白いだろう」とのこと。幸い年度明けすぐには仕事もあまり忙しくなく、平日に休みを取って行くことができました。

松竹の歌舞伎興行には、ベテラン俳優が多く出演する「大歌舞伎」と、若手俳優主体の「花形歌舞伎」があります。今回の「四月大歌舞伎」昼の部の演目は、

以上の三番四幕。席は3階A席を取りました。御代は6,000円。二等だと14,000円と一気に倍以上になるので、ちょっと背伸びしすぎるのよね。それでも2列目の中央寄りが取れましたから良かったです。花道も、舞台寄りの七三までは見えたしね。

3つの演目は、平たく言えば、フロントアクト、メイン、アンコール、のような感じ。それぞれにつながりはもちろんありませんが、すんなりと歌舞伎の世界に入り、飽きさせず、初心者でも楽しめるつくりになっていました。

歌舞伎って、極稀にテレビで流れる映像なんかのイメージで、けっこう敷居が高いって感じがあると思うんです。セリフの言い回しがよく分からない、歴史背景をちゃんと理解してないとついていけない、衣装やメイクがやたらにきらびやかで眩しい。そんな感じで、なんとなく「近づけない世界」みたいなイメージを持たれていると思う。実際、僕もそうでした。

ところが、実際に見てみると、何のことはない"普通の"時代劇です。今回のメインである「不知火検校」は、天才的な知性と計略で悪事の限りを尽くす按摩の一代記。江戸時代の姿勢を描写したいわゆる「世話物」と呼ばれるジャンルですが、テレビの時代劇(水戸黄門とか暴れん坊将軍とか)のようなことを、そのまま舞台でやってるだけなんですよ。もちろん江戸言葉や大名/町人独特の台詞回しはあるので、そのへんは解説があったほうがいいですが、意外と普通に見られるんですよ。それが、実は一番印象的でした。

俳優陣で強烈に印象に残ったのは、一番目で後見を務めた尾上松也。一番目の主演である染五郎は人形の役で勝手に動けないので、開演のあいさつは後見の松也がやるわけです。正座して結界を張り、左右正面の客席をキッと見つめて恭しく礼する様は、もうそれだけでカッコ良かったですね。踊りについては松也に目立った演技はないんですけど、人形の糸が絡まる段の見せ場の所作は、まさしく指先まできちっと神経が行き届いたもので、実に美しかったです。松也は踊りに秀でていて評判もいいので、今度は松也自身の踊りも見てみたいですね。

イヤホンガイドも借りてみました。上演中はイヤホンを片耳に入れっぱなしにするわけですが、セリフや歌、踊りの合間のいいタイミングで適度に解説が入るので、観劇を邪魔されることはほとんどありません。歴史背景の解説や、初心者にはわかりづらい「間」の解釈もあるので、僕みたいな素人には必需品ですね。

歌舞伎、とっても面白かったです。これほどのものが、PR不足とチケット代の高さで若年層に敬遠されがちというのは、何とももったいない気がします。若い人たちや、「ちょっと興味はあるんだけど・・・・」な人たちにとって、もう少し敷居が下がるような作戦を考えたらいいのに。これは歌舞伎に限らず、ほとんどのサブカルチャーに言えることですけども。 ぜひまた見に行きたいと思います。今度はもうちょっと良い席で見よう。そうしよう。

ビジネスマンへの歌舞伎案内 (NHK出版新書 446)
成毛 眞 NHK出版 売り上げランキング: 28,968