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がんばりすぎずにあるこうや。

【ネタバレあり】探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 探偵はどこにもいない

前作「探偵はBARにいる」もなんとなく気になってはいたんですが、映画を見ることをが全く習慣づいていない性格なので、まんまと見逃してしまっていたのです。今回は尾野真千子が出演するということだったので、何とはなしにまず見に行かねばならん!と決めていて、平日のレイトショーに駆け込んで見てきました。まぁ、twitterで「見に行ったよ!」っていうPostを見なければ案の定見逃していたかもしれないんですけど(^-^;;

考えてみれば邦画はあんまり見てこなかったなぁという印象もあったし、コメディシリアスなテイストの映画も多くは見てないので、見たあとはなかなか新鮮な感覚でした。面白かったですね。自分の知らないものを勇気を出して味わってみるってのがいかに面白いものか、改めて実感したような感じでした。

以下、作品のネタバレを含みますのでご注意ください。たたみます。

見始めてしばらくしてから思ったことは、やっぱり前作を見てからにするべきだったかもしれないということです。というのも、登場する人物の紹介や場所の説明が、ほとんど何もないんですよ。すすき野が舞台になっているので、みんなそこにいる人たちだし、大泉洋がよく入り浸ってるオカマバーもすすき野にあることはわかるんですけど、逆にいうとそれくらいしかわからない。どんな人たちなのか、主人公とどういうつながりがあったりするのか、突然登場するヤの字っぽい人は何者なのか、そういう部分の説明がないので、世界観を把握するのに苦労しました。

物語は、主人公行きつけのオカマバーで働いていたマサコちゃん(ガレッジセールのゴリ)が突然の死を遂げたところから始まり、その事件を追いかけていくというのが基本線なわけですが、原発絡みの政争の影あり、プロ市民による実力行使あり、ヤの人たちの暗躍あり、いろいろな要素がうまーくラインに載っています。伏線というのではなく、基本線があったうえでそれに肉づけをするような形で存在しているんですね。だから、見ているほうとしても必要以上に頭を働かせて考え込む必要はないし、相関が変に複雑になることもないのでわかりやすいです。視覚から入ってくる情報だけでダイレクトに楽しめるのは良いですね。見やすいです。

お目当てだった尾野真千子は、新進気鋭の美人ヴァイオリニストという役どころ。クライマックスでソロのステージシーンがありますが、青いドレス姿はとても綺麗でしたよ。ヴァイオリンの演奏操作もしっかり練習したんでしょうな、音とのシンクロはほとんどありませんでしたが、動作そのものはしっかりしていたように見えました。

とはいえ、ほとんどは美人キャラではなくて、ダラッとしたキャラクタで演じていましたので、彼女はもうこのキャラクタが定着してしまったのだなーと実感しました。僕が尾野まっちーを始めてみたのは、2010年のMBSのドラマ「MM9」なんですが、そのときもわりと怠惰な公務員という役柄で、ダラッとしたキャラクタを自然に演じていたのが印象的でした。これがすごく面白くて、僕もこのキャラに魅了されてしまったクチなのであんまり文句言えないんですけど、でも「サマーレスキュー」のようなキリッとした美女系の役もこなせるので、いろいろ幅を広げて活躍してほしいなと思います。あと早く結婚したんさい(笑)

大泉洋の相方役にいるのは松田龍平。実をいうと、僕は松田龍平の演技があんまり好きではないんです。彼はどんな役を演じでも表情の変化が乏しく、感情が見えにくい。端的に言って「何を考えてるのかわからない」ことが多くて、ちょっと苦手なんですよね。ただこの作品では、コンビを組む大泉洋がご存知の通り大変感情の変化が豊かで、表情も声のトーンもくるくる変わるし、アクションも必要以上にオーバーなことが多い。なので、松田龍平の鉄面皮な演技とちょうどバランスが取れて、うまい具合に味を出してました。これはなかなか周到なキャスティングだと思いましたね。「役者を巧く使う」ってのは監督の腕の見せ所ですし、それがよくできていたと思います。素晴らしい。

この松田龍平大泉洋が、バーの中で肉弾のアクションを繰り広げるシーンがあるわけですが、これが実に新鮮でした。海外のアクション映画では珍しくありませんが、邦画でこういう"正統派"の格闘アクションが展開されることってそう多くないと思います。近年「クローズ」などでいわゆる"不良のケンカ"シーンがあったりはしますが、そういうのとはレベルが違う。しっかり鍛えられた「強さ」というのがちゃんと表現されるアクションシーンというのは、見ていても爽快なんです。海外俳優の専売特許だと思ってましたけど、日本の俳優でも、日本の映画でもできるということを示してくれたのは嬉しかった。アニメと感動人間ドラマとお笑いだけじゃないんだよ、日本映画はさ。

シリアスなシーンもありますが、基本的にはコメディ映画です。暗い映画館なのでなるべく声を出して笑うのは控えようとするんですけど、でもいつの間にか、ちょっとくらいなら「ハハハ!」って笑っちゃってもいいかな、っていう雰囲気ができてるんです。あれは不思議ですね。本来あるべき空気を作り変えてしまえるっていうのは、それこそ"一流"の為せる業なんだろうなぁ。

喜怒哀楽がジェットコースターのように入れ替わる、動きの激しい映画ですが、その分見てて本当に楽しめます。メリハリもはっきりしてるし、純粋に見てるものだけで楽しめるというのは面白い。古ぼけた昭和の大衆映画のようなテイストですが、でもそういう映画も現代にちゃんと生きているし、十分面白いものになるんだと思いました。おススメです!