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がんばりすぎずにあるこうや。

国際親善試合 弾丸娘の鮮烈デビュー!

国際親善試合 日本○2 - 0●ナイジェリア

祝日の関係で平日が少ない週なのに、無理くり休暇をねじ込んで、フクアリに代表戦を見に行ってきました。僕自身「代表戦」と名のつく試合はこれが初観戦。男子の代表戦を見る前に女子のほうに行ってしまっていいものかなぁとちょびっと悩んだりもしましたけど、でもそんなこと関係ないと思い直しました。いつものフクアリとは全然違う空気が流れていて、それだけでも十分に楽しめました。行ってよかった。

では、年内最後の強化試合に臨む日本女子代表"なでしこジャパン"の先発メンバーを振り返ります。GKは山根恵里奈。最終ラインは4バック。右から、有吉、岩清水、長船、初召集の上野紗稀。宮間と阪口がドイスボランチを組み、サイドハーフは右が川澄、左が浦和の後藤三知。大儀見と大野忍のツートップです。この試合は6人の交代枠をすべて使い切り、最終フォーメーションは、GKに山根、バックスは薊、岩清水、長船、有吉、ボランチ川村優理と宮間、ワイドが中出と木龍七瀬、ツートップに菅澤と田中美南という形でした。

日本の基本戦術は2パターンに集約されていました。ひとつは前線の大儀見にロングボールを送って中盤に落とし、直接バイタルに侵入あるいは一旦サイドに展開してクロス、というツートップの高さを活かしたサッカー。もうひとつは、センターバックと低めにセットしたボランチからビルドアップをはじめ、相手DFが高めやや中央に寄ったのを見て、サイドに広く空いたスペースにサイドハーフサイドバックが強襲して一気にボールポジションを上げ、最後は中央に人数をかけて押し込むという形。結果的にこういった流れからの得点が生まれなかったので戦術がうまくいったとは決して言えないんですが、素人目にもこのチームが「やりたいこと」がはっきりと見えるほどに、選手たちには戦術が浸透していました。

決定的なチャンスにならなかったのは、例えば個々のクオリティの問題とか、3日程度ではどうにもならない連携面とか、年単位で熟成された"阿吽"の連携とそうでない人たちのズレだったりとか、それこそ6人もの選手を変えたせいだったりとか、いろいろあります。前線のポストプレーにしても後ろからの楔のパスにしても、ほんの少しのズレなんですけど、それが重なれば致命的なミスになってしまうわけで、そういう部分が目立ったかな。チームとしての歯車は噛み合ってませんでした。

とはいえ、今回のナイジェリア2連戦の目的は、より多くの選手が日本女子代表の目指すサッカーを体感すること、現在の主力と自分との差を痛感し何が必要かを模索すること、実践の場で世界との差を肌で感じること、ある程度の手応えを掴みつつも内容に満足せずにさらなるレベルアップを目指すモチベーションを得ること、そういう部分だったわけです。結果も伴ったことで、その目的は十分に達成されたと思っています。宮間や岩清水は横から見ていても明らかに一段上のプレーを披露していたし、彼女らの働きがなかったら中盤から後ろはズタズタにされてもおかしくなかった。この2人を見てハッとした若手は多いと思います。みんな「まだまだ上がいるし、自分はまだ上に行ける」って思ったはず。

来年のアジアカップ、再来年のワールドカップ、2016のオリンピックと、今後大きなコンペティションが続きます。ロンドンオリンピック勝戦のスタメンの平均年齢が26.7歳なので、リオに向けて急に若返る必要はない。でも、緩やかでも世代交代はしなくてはなりません。この2連戦をきっかけに、なでしこリーグ全体として「日本女子のサッカー」を共有して、来年以降の代表合宿ではよりステップを上げたものを作っていく。現在の主力選手たちは、自分の持っているものを次世代に継承する。20歳前後の若い選手もたくさん出場したし、内容に満足していないにせよ、いやむしろ満足していないからこそ、レベルアップの余地があると信じてチームを再構築できる。十分に価値のあった10日間であったと思います。

さて。

当然のお目当てである上野紗稀ちゃんですが!

前述のとおり、なんと先発での登場でした!スタメンが発表されたときにはあまりに興奮してしまって、しばらく頬が緩みっぱなしでした。長崎での試合を見て、バックスは先発できなければほとんどチャンスがもらえなさそうだという感触があったので、本当にドキドキしていたんですよ。鮫島が離脱したことによってまわってきたチャンスとはいえ、18歳でのフル代表デビューです。贔屓の選手の代表初キャップをこの目で直接見守れるなんて、こんなに嬉しいことはない!

前半から前の後藤三知とよく連携を取り、サイドの深いところにあるスペースに積極果敢に走りこんで、ボックス内にクロスボールを供給しました。後藤とのコミュニケーションはとてもよく取れていて、アタック&カバーが見事に噛み合っていました。それだけに後藤が30分少々で負傷交代してしまったのが大変悔やまれます。ただこれ以降も、ボランチの阪口、センターバックの岩清水や長船ともよく話をしながら、左サイドで躍動しました。周りに助けられる部分はもちろん多かったですが、初出場ですからね、それを考えれば十分及第点じゃないでしょうか。めぐってきたチャンスをしっかりモノにできたと思います。

序盤には思い切ったオーバーラップからそのままボックス内まで駆け上がり、川澄のクロスに右足をハードヒットさせて、あわや代表初ゴールか!というところまで行く場面も。ナイジェリアが空気を読んでくれなくてお預けになってしまいましたが、これには驚きました。あそこまでグイグイいくとは思ってなかった。ジェフのときよりもずっと前に前に意識がいっていたように見えました。初アシストのチャンスも何度となく作ったし、ライン際までボールを追いかけて何度も何度も上下動を繰り返した。労を惜しまない無尽蔵の運動量こそ、上野ちゃんの真骨頂です。惜しくもフル出場はならなかったものの、サポーターからもたくさんコールをもらって、本人も「やりたいサッカーはできた」と満足げ。コーチ陣にも多くのファンにも、強烈に印象を残したんじゃないでしょうか。すっごくがんばった。

試合後にはなんと3人目のヒロインインタビューに選ばれて、お立ち台に立ちました。メディアからも注目されたということですね。このインタビューで本人も言ったように、オーパーラップやパワーキックの面で良さは十分にアピールできたものの、課題はディフェンスとポジショニング。阪口や隣の長船がよくカバーしてくれてましたが、スピードでぶっちぎられたり、切り返し一発で振り切られてしまったりもしてました。攻撃面でも、フィードがスライス気味になって精度を欠いてしまったり、トップスピードからのクロスが"ただ蹴るだけ"になってターゲットに合わなかったり、うまくいかないシーンが多かった。その度に「ああ、もう!」と悔しがっていました。改善の余地はたっぷりあります。つまり、まだまだレベルアップできるということ。

試合後の場内一周のときには、観戦に来ていたアカデミーの子たちに笑顔で手を振りながらも、とても疲れた表情をしていたように見えました。いつもの上野ちゃんなら90分走り続けてもけっこうケロッとしているのに、珍しいなと思いました。慣れない選手たちとのプレー、初代表の緊張と興奮、10000人を超える大サポーターの声援、海外勢の圧倒的なパワーとスピード、満足なプレーができないフラストレーション。小さな体で、いろいろなものと戦っていたんでしょう。それでも、十分な手ごたえを掴んだ充実感はあったはず。そのひとつひとつを糧にして、もっと成長して強い選手になってほしい。今年はこれから国体やU-19アジア選手権を絡めた超過密日程が待っていますが、より強く、よりタフになるために、しっかり乗り切ってほしいし、上野ちゃんなら乗り切れると思っています。まだ18歳。それぞれの経験を活かし、悔しさを忘れず、そして何よりもサッカーを楽しんで、世界に誇れる素晴らしい選手になってほしいと、心から願います。上野ちゃんが走り続けるかぎり、僕はどこまでも応援しよう。

なでしこジャパンは年内の活動を終了します。次は来年2月の強化合宿。次いで3月のポルトガル遠征があり、5月にはワールドカップ行きを賭けたアジアカップがあります。まずここできっちり出場権を獲ることが、来年上半期の最大のミッションです。「アジアで勝つのは当たり前くらいにならないと」という宮間の言葉通りになるように、なでしこリーグを含めた日本の女子サッカー全体でレベルアップをしなければ。世間的な関心の部分を含めて、ここからの1年は正念場だと思います。がんばろう、ニッポン。

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