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がんばりすぎずにあるこうや。

J2第17節 痛み分け

2010 Jリーグ Division 2
第17節 ジェフユナイテッド市原・千葉△2 - 2△ヴァンフォーレ甲府
3位(勝点30)→3位(勝点31)

ジェフの選手もサポーターも、甲府の選手もサポーターも、誰もが口を揃えて意識する、問答無用の「大一番」。2位の甲府と3位のジェフ、昇格争いのライバル同士の対戦は、ワールドカップ中断前最後の大事な試合になりました。アウェイチケットは発売直後に完売、JRの応援号も盛況と、多くのジェフサポが駆けつけた小瀬競技場。「決戦」の始まりです。

スタメンを振り返ります。前節・愛媛戦と変更ありません。GKに櫛野。DFラインは右から、和田、福元、青木良太、アレックス。ボランチの形で佐藤勇人工藤浩平。トップ下に米倉恒貴。右ワイドに太田、左は倉田、頂点に巻誠一郎。ベンチには中後が復帰。谷澤、ネットもいます。"小瀬キラー"青木孝太ももちろんベンチ入り。

前半、ジェフは後方からのロングボールを多用していました。愛媛戦で上手くいっていた方法を、甲府相手にもやろうとしていたんだということは分かりました。が、上手くいっていたかというとそうでもない。何せ甲府センターバックは、高さも強さも頭の良さも持っているダニエルです。巻も米倉も、ダニエルにほとんど勝てていませんでしたし、津田と競り合って落とせたとしても、そこには必ずこのクレバーなセンターバックがいるのです。ここを攻略するのはなかなか難しくて、前回の戦い方は通用しないな、ということは早々にわかりました。でもそれを補完する"プランB"がなかなか出てこなくて、結局前半は思ったように攻められずじまい。工藤と佐藤を起点にした平面サッカーでは何度かフィニッシュチャンスを作れていましたが、今度はシュートが枠に飛ばない。気温がかなり上がっていて、始めからハイプレスを続けると後半足が止まるということを恐れてか、どこか燃料をセーブしたような戦い方になっていました。それ自体は間違っていないと思うんですが、それならそれで緩急をしっかりつけて、シメるべきところはシメないとね。

片桐の先制ゴールは、それはそれは見事なものでした。片桐の利き足とは逆足でのシュートでしたけど、実にきれいにゴール右隅へ飛んで行きました。一瞬ゴールの右へ外れるんじゃないかと思ってしまったほどの絶妙なコース。後半早々の養父のゴールは、アレックスに当たってしまった不運なものでした。どちらも櫛野にはどうしようもない感じもします。しますけど、ミドルの対策は今一つでしたね。ひとつ後ろでの動きに対応しきれなかった。ボールホルダへのプレッシャーは十分でしたが、他への意識が若干希薄でした。これも"燃費走行"の影響なのかもしれません。

養父の2点目が65分。2点ビハインドで残り25分。もう吹っ切れるしかないということで、ようやくのプッシュモード点火。右サイドを谷澤に、トップを巻と青木孝太の2枚にチェンジして、プレッシングとスペースランを連続するハイテンションサッカーを始めました。奇しくもこの頃から甲府の足が止まり始めていて、アレックスが上がり目でプレイできていた。これは大きかったです。倉田のゴールもアレックスが起点になっていますからね。これも石原に当たってコースが変わったラッキーな(荻にとっては不運な)ものでしたけど、角度のないところからコンパクトに振りぬいた倉田らしいゴールでした。

このあと、ハイボールでダニエルに勝てていなかった巻をネットに変えて、最前線での粘り気を追加投入。ネットは高さもあって警戒されていましたが、その隙を突いて青木良太が同点ゴール。和田のロングスローからネットの鼻先でフリーのヘディングを見せました。これはお見事。ダニエルも津田も荻でさえも、ネットに気を取られていましたからね。和田もいいところに放ってくれましたし、青木もよくあの場所を見つけましたよ。

青木は守備面でも大活躍。甲府の最大のストロングポイントである、マイク・ハーフナーを完全に封じ込め、ほとんど仕事をさせませんでした。競り合いでたとえ勝てなくとも、しっかりと密着していいボールを落とさせない。セカンドボールには、今度は福元がちゃんと対応しました。パウリーニョに対しては和田と福元でプレイエリアを消し、テンポの速いプレーが売りのブラジル人を自由にさせなかった。この2人をほぼ完ぺきに抑えられたのはかなり大きかったです。おかげで工藤と佐藤がわりと攻撃にシフトできるようになり、甲府の攻撃のスイッチャーでもある藤田を守備に張り付かせることに成功しましたからね。残りの攻撃ピースである片桐と養父にやられてしまったのは悔やまれるところですが、決定的に崩された場面がほとんどなかったのは素晴らしいことだと思いますよ。

同点にした後もボールをよく拾えていたし、足も止まっていなかったし、何より勢いがすごくあった。正直「これはイケる!」と思っていましたが、コーナーからのこぼれ球を和田が打ちにいったところで、荻と接触して長時間の中断。ここで多少なりとも勢いをそがれてしまった部分はあったと思います。再開後も、谷澤のクロスに青木孝太が飛び込んだり、ボックスすぐ外でのフリーキックだったり、工藤のボレーがあったり、ネットがDFの裏、倉田の前にボールを出したりとチャンスがいくつもあったんですが、わずかに精度が足りなくてゴールできず。

「痛み分け」というのは正直な感想です。後半序盤までのサッカーを続いていれば、甲府は間違いなく勝っていた。後半終盤の勢いを活かし切れれば、ジェフは間違いなく勝っていた。そのどちらもができなかったから、引き分けになった。そういうことです。勝てなかったのは正直悔しいですけど、どこかすっきりと納得している部分もあります。

ただね、荻が和田と接触してうずくまっているとき、ジェフのゴール裏から壮絶なブーイングが起きてしまったのは、正直申し訳なかったと思います。勢いをそがれてしまうのを嫌ったことや、時間を使われることを恐れたというのは理解できなくもない。けど、サッカーはGKがいなければ試合にならない。GKが負傷した際には、しっかりと確認・治療の時間を取って、交代選手の準備ができるのを待つ。それは当たり前のことです。その間のプレイクロックは当然きちんと止まります。考えればわかることなのに、それすらできなかったというのは、何とも情けない。あそこはブーイングはすべきではなかった場面ですよ。

今季はこれまで、甲府の試合もたくさん見てきたので、甲府目線でも少し書いてみようと思います。

山本が負傷中、秋本と吉田豊が累積警告で出場停止と、バックラインは大改造を強いられましたが、代わって入った津田と池端は無難な動きをしていたと思います。池端は、倉田とアレックスが前がかりになってできた裏のスペースに入り込むこともあって、チャンスを作れる場面もありました。結果的にうまくいっていなくて、後半に石原に代わってしまいましたが。津田は相方のダニエルをよくサポートしていたと思います。巻や米倉との競り合いにも負けていなかったし、要所要所でジェフの攻撃の芽をつぶしていました。ダニエルがいつもと変わらないくらいのパフォーマンスを発揮できていたのは、津田が献身的に支えたからだと思いますよ。

石原が入ったことを知った時は、僕は保坂をセンターバックに下げ、津田を右サイドに出したかと思いましたが、どうやら石原がそのままサイドバックに入っていたようです。石原のサイドバックは、正直うまくなかったんじゃないかな。アレックスと倉田にだいぶ翻弄されていたように見えました。ただ、ベンチワークとしても、あれができる精一杯だったのかもしれません。

左サイドでは、内山が太田や和田との肉弾戦を展開。これは実に見ごたえがありました。内山の突破力はかなりの威力を発揮していて、太田が深く入り込んだ後ろを思い切り使っていました。また時には右サイド深くまで入り込んで、体を投げ出してゴールを狙うシーンもあったり。そこでボールを奪われれば一転して大ピンチなんですけど、そういうリスクを冒してもなお、自分でもゴールを目指していくという姿勢には感動すら覚えます。そういえば、ジェフにも似たような選手がいましてね、坂本という選手が。

前線では、ケガで長らく戦列を離れていた大西が復帰。後半にパウリーニョに代わって久々のピッチに立ちました。とは言え本調子にはまだ遠く、加えてパスの出し手となる藤田、ターゲットのマイク・ハーフナーを抑えられて、本領を発揮できませんでした。持ち味の「バビューン!」と突き抜ける快足も見られず。ただ、この段階で実戦復帰できたのは大きいでしょう。1か月の中断中に、PSMなどで感覚を取り戻すこともできますし、片桐もポジション争いに必死になってお互い高めあうこともできるでしょうし。中断に向けては明るい材料になるはずです。

対して、荻の怪我は心配なところ。顔面から思い切り突っ込んだ、勇気あるセービング。そのあとうずくまりながらも足を動かせていたし、意思表示もできていたようなので、脳震盪みたいな大変なことにはなっていないだろうなと思っていましたが(一番近いところで見ていたので)。診断では、左人差し指の骨折だそうで、全治は2ヶ月。GKにとって手は一番大事な部分ですから、焦らずにじっくり治してほしいです。昨年終盤に椎間板ヘルニアで戦線を離脱してしまった経緯もあって、本人が一番悔しいはず。けど甲府のサポーターは、荻が帰ってくるのをじっと辛抱して待つはずです。昨年から甲府のゴールを守り続けてきた守護神。何より「荻と一緒にJ1へ!」という思いは強いはずだから。

これで1ヶ月ほどの中断に入ります。これまでの16試合で見つけた課題を克服したり、強い部分をさらに伸ばしたり、いろいろできる1ヶ月です。館山でのキャンプや鹿島とのプレシーズンマッチもあるし、試す機会はたくさんあるはず。ケガをした選手はしっかり治してもらって、中断明けの札幌戦の頃には、またのその勇姿を見せてくれるといいなと思います。

最後に。今回は「ワンワンダービー」ということで、ジェフィとユニティも小瀬にお邪魔しました。それはそれは盛大に迎えていただいて、よくしてもらいました。甲府のみなさん、ありがとうございました。ヴァンくんは試合後にもアウェイのゴール裏にあいさつに来てくれて、「今日は来てくれてありがとう!一緒にJ1に上がりましょう!」と身振り手振りで伝えてくれました。ありがとう。ぜひ一緒にJ1に上がりましょう。そしてまた小瀬に来られますように。10月は、フクアリで待っています。

[J'sGOAL]【J2:第17節 甲府 vs 千葉】レポート