なでしこ第3節 "女子なり"の戦い方

プレナスなでしこリーグ2011
第3節ジェフユナイテッド市原・千葉レディース○2 - 1●浦和レッドダイヤモンズレディース

なでしこ人気に便乗して、というわけではなくて、このタイミングでレディースの試合を見に行こうというのは前から決めていたので、NACK5スタジアムまで車を走らせて行ってきました。なでしこリーグの試合を見るのは2年ぶり。レディースには個人的に注目している選手がいるので、今季1度は見に行こうと思っていたんですよね。

まず、ジェフレディースのスタメンを振り返っておきます。GKは杉浦。バックスは右から、千野、河村真理子、高橋、細川。山田と花桐のダブルボランチで、右サイドハーフに井上、左に安本。清水と深澤のツートップですかね。普段レギュラーの船田、筏井はユニバーシアードのため欠場です。

ジェフは主に両サイドの井上、安本を経由したワイドなサッカーを展開しようとしていました。縦への速いパスが効果的に使えていて、スピードのある深澤と清水のツートップの強みを存分に生かしたスタイル。レッズのバックラインが高めにセットされた裏を狙って、決定的なチャンスをいくつも作っていました。決まっておかしくないのもあったんですけど、山郷のバックアップとして出場した高校生GK・田尻もいい反応を見せて、前半はゴールを守りきりましたね。ディフェンスでボールを奪ってから、速いテンポでサイドから攻撃を仕掛けようとしていましたが、中盤でのショートパスのミスが多かったのはもったいなかった。

対してレッズは、センターを支配してコンパクトに形を作ることを念頭においたプレー。ツートップの吉良と安田は、出場してる選手の中ではそりゃもうバツグンに巧くて、ジェフのセンターバックとボランチのトライアングルを何度も翻弄。自分の間合いを作り出して、ループでファーサイドのゴール隅を狙ったりと、何度もジェフのゴールを脅かしてきました。

そんな中でも、ジェフのセンターバックの2人、高橋と河村のバランス感覚には光るものがありましたね。守備の際には山田が下がって5人でラインを形成する形になっていましたが、レッズの中盤の構成力・展開力で、そのラインを崩されてしまうこともたびたびありました。が、高橋と河村がしっかりとスペース、パスコース、ランのルートをカバーして、組織での攻撃を成功させなかった。安田の個の力でピンチになったのは、もう安田が上手だったとしたものですが、センターバックの貢献度は非常に大きかったですね。

後半に先制を許したあと、ボランチの花桐に変えてトップの丸山を投入。このときのポジションチェンジが正直はっきりしないんですが、安本が中央よりでボールを受けられるようになり、前への推進力が一気に増しました。右サイドの河村も前線深くまで顔を出して、清水、深澤、丸山と合わせて、なんと前線を5人で攻めまくるような感じに。コーナーが増えたのもその賜物ですね。同点ゴールになった細川のコーナーは、左コーナーを左足で直接叩き込むというものすごいもの。実際のところは、ニアで競った丸山がブラインドになって、田尻が処理を誤ってしまったオウンゴールのようなものでした。

しかしここからはもうジェフのペース。レッズは疲れもあってか、分厚いジェフの攻撃についていけなくなります。逆転ゴールにつながる河村の右サイドへの抜け出しも、レッズのサイドバックはクロスのコースを絞りきれず、精度のいいマイナスの折り返しを上げさせてしまいました。この時点でボックス内には2人。ファーで構えていた丸山は、直前に同じようなシーンで中央に絞りすぎてクロスに合わせられなかったことを活かしたのでしょう、走り出しをよく我慢して、右足インサイドでハードヒット。丸山はようやくの今季初ゴールだそうで、会心のガッツポーズでした。前線の枚数を増やしたことでゴール前の攻撃に迫力が出て、それはレッズのマークにもズレを生じさせたんでしょう。

女子のサッカーはあまりプレースピードが速くないのが常ですが、ジェフの選手は最後までよく走っていました。途中出場の河村と丸山は、フレッシュな状態でとにかく前に横に走る労を惜しまず、それが決勝点にも結びついています。テクニックで勝てないなら、運動量で粘って勝つしかないと、そのためには常に相手に走り勝たないとダメなんだと、そういう「サッカーの基本」を思い出させてくれます。大事なことだよね。

試合後は、トップでもおなじみのでんぐりで勝利をお祝い。前日が誕生日だった清水さんは、サポーターに促されて万歳三唱、のはずが、ろくに打ち合わせもせずに始めたもんだから、えらくグダグダになっちゃいましたｗそのあと、レッズのサポーターが千葉コールをしてくれたのに応じる形で、とジェフのサポーターは浦和レッズコール。互いの健闘を称えあいました。トップの試合ではまず見られないことで、こういう"プロっぽくない"ところも、なでしこリーグの大きな魅力だと思います。。

ところで、冒頭に書いた「個人的に注目している選手」ですが、実はユニバの影響で今回欠場だった、筏井さんなんです。彼女は筑波大学女子サッカー部から今季入団したルーキーで、それでいて9番という重い番号を背負っている注目株。筏井さんのプレーを生で見ようと思ってこの日の観戦を計画していたんですが、間の悪いことに中国に旅立ってしまいました。

なので、また機会を見つけて見に行きたいと思いますよ。チャンスはそう多くはないと思うけど、なんとか見つけて、筏井さんのプレーを見てきたいですね。