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がんばりすぎずにあるこうや。

なでしこRS第4節 ミスマッチの代償

2015 プレナスなでしこリーグ1部 レギュラーシリーズ
第4節 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース○2 - 0●スペランツァFC大阪高槻
5位(勝点5)→4位(勝点8)

今回のホームゲームは東金開催。東金での試合は毎年1回はあるんですけど、いかんせん東金はめちゃめちゃ遠いのです。JR東金線の本数が極端に少なくて、乗り継ぎもあまり良くない。行くだけでひと苦労です。今回みたいにキックオフ時刻が早いと、朝も早起きしなきゃだしね・・・・

3試合でいまだ勝点を獲得できていない高槻が相手で、戦力的にはジェフが優位。それは試合前から予想していましたが、だからといって高槻がここまで極端な守備シフトを敷いてくるとは思っていもいませんでした。最終ラインに常に5人のDFを並べ、中盤に2枚、それとウイングフォワードを含めた3人のアタッカーという布陣。最終ラインとボランチの7人は、セットプレー以外ではミドルサードを越えることがほとんどなく、ジェフがボールを持つと常に3人以上でプレスをかけてくる。苦労してそれをはがしても、ゴール前は4人5人が固めているので、入ってくるボールを全部かき出されてしまう。いわゆる「ドン引き」のサッカーで、いくらアウェイでもこれはどうなんだろうと思わずにはいられませんでした。

ジェフは筏井さんを左サイドに置き、ここを基点にして攻撃の形を作ろうという意図でした。ですが、やはり多人数で寄せられると、いくら筏井さんでも振り切るのは難しい。瀬戸口さんや深澤さん、菅澤さんまでポジションをずらしてサポートに入らないと、先に進めないのです。テンポよく左サイドの深いところを使うことができればまだ違ったんでしょうが、この日のレフトバックは若林さん。美里さんはオーバーラップを得手とするサイドバックではないし、ついでに言うと左脚のキックも持っていないのです。このミスマッチは大きかった。効果的な攻め手を作れないまま、前半は終わってしまいました。

おそらく、三上監督はスタメンのチョイスの時点で失敗してしまったのだと思います。高槻には丸山桂里奈成宮唯という強力なアタッカーがいて、共にスピードを武器にするタイプ。この2人を同時に相手にするのは、櫻本さんと西川さんだけでは心もとない。なので、成宮が張る左サイドに対人守備に強い美里さんを置いた。その意図は理解できます。

ですが、高槻の攻撃パターンは、前に張っている丸山に低く長いボールを当ててタメを作り、そこに成宮が単騎でボールを引き出す動きを取る、というもの。つまり、丸山のところさえガッツリ抑えてしまえば、その先がないのでピンチにはならないわけです。丸山に圧力をかけるのには西川さんは十分な対応を取ったし、実際成宮にボールが渡ることもほとんどなかった。畢竟、美里さんが守備機会を持つ場面が少なかった。結果論ですが、美里さんが左サイドにいたことは、チームにとっても美里さんにとっても難しい状況を招くことになってしまいました。

「相手がしっかりと5バックで守ってくるのは想定していた」と三上監督は言いましたが、逆に高槻の攻撃がここまで単調になることまでは想定できてはいなかったのだと思います。とはいえ、美里さんを早い時間で引っ込めてしまうのは、それこそ終盤のクロージングのことを考えればあり得ない選択だし、ポジションを組み替えるにも左サイドで強みを発揮できる選手がピッチにいない。前半のうちに瀬戸口さんを鴨川さんにスイッチしましたが、これだって瀬戸口さんのパフォーマンスが良くなかったわけじゃない。三上監督が必死にひねり出した苦肉の策であったのです。効果的な手が見いだせない、シンドイゲームになってしまいました。

こうなるともう"一発待ち"なわけで、その一発がPKという形で転がり込んできたのはラッキーとしか言いようがありません。安齋さんの投入は、右サイドを活性化して高槻のDFを引っ掻き回すのに十分効果的でしたが、そこから2ゴールを取れたのは、高槻が息切れになったり、失点して多少前がかりになった部分も大きいと思います。勝ててよかったです。負けることはまずなさそうでしたけど、どうやって点を獲っていいのか、結局何が正解だったのか、最後まで分からない試合でした。

さて、ご贔屓の上野紗稀ちゃんですが。

ベンチ入りはしましたが、この日は出場なし。前節のベレーザ戦に続いて、2試合連続で不出場です。公式戦でベンチ入りしながら出番がないというのは、一昨年の加入以来ちょっと記憶がないんですよね。たぶん初めてだと思います。しかもそれが2試合続いているという。

左サイドの攻撃が停滞していた中で、レフトバックが上野ちゃんだったらもっとアクセントもつけられたんだろうなぁという思いはありました。ですが、やはり美里さんを途中で下げるという選択はないし、かといって千野さんを下げて美里さんを右に持っていってというのも考えづらかった。そして三上監督が選択したのは、最終ラインではなく中盤の構成を変化させることだった。早いうちにボランチに手を入れたのを見て、今回は出番はなさそうだなと、残念ながらそう思いました。

上野ちゃんが「伸び悩み」の時期にいるのは分かっています。現状は西川さんをセンターバックに入れて、なでしこリーグジェフレディースのサッカーに慣れさせている。そのあおりでポジションを失っています。相手関係によって美里さんとの併用になっていますが、その序列もいつまで平行でいられるかわからない。そして、この試合ではINACから移籍した磯金さんがケガから復帰してメンバー入りしました。この磯金さんこそ、上野ちゃんと同じポジションを争う最も強力なライバル。端的に言って、大ピンチです。

今季のジェフレディースには、GKとセンターバック、FW以外には、マルチロールな選手が揃っています。そういう中で、ひとつのポジションのみを狙ってレギュラーを獲るのは本当に大変なこと。辛抱強くトレーニングを積んで、練習試合でアピールをして、地道に勝ち取っていくしかありません。チャンスはきっと来る。それまでちゃんと我慢できるかどうかが勝負だ。

ジェフレディースはいまだに負けなし。上位勢はすこぶる好調ですが、それになんとか食らいついています。対戦が一回りするワールドカップ中断までは、なんとかこの位置をキープしたい。コツコツ勝ち点を積んでいくことこそが、タイトル獲得への近道なのです。