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がんばりすぎずにあるこうや。

なでしこ第9節 化学反応の功罪

プレナスなでしこリーグ2013
第9節 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース△0 - 0△アルビレックス新潟レディース
7位(勝点9)→7位(勝点10)

今年はなかなかスケジュール組が難しい中、ここ!と決めた年イチレディース観戦に行ってきました。会場も見やすいフクアリだし、ちょうどトップのホームゲームの前日に入ったし、実家に泊まれば翌日も楽だ!というわけで、今シーズンの折り返しとなる新潟戦です。移籍選手の関係で奇しくもちょっと因縁めいた組み合わせの試合になりました。

スタメンです。GKは長身の山根恵里奈。ディフェンスは4バック。右から、千野晶子、桜本、高橋佐智江、上野紗稀インサイドハーフに柳井と川村優理。ワイドは、右が川村真理、左が筏井。深澤と菅澤のツートップです。2ラインがフラットに並ぶ大変オーソドックスな Four-Four-Two でスタートしました。ベンチにはGKの船田以下、山本、中島、北川、小川の5人が入っています。セミプロのなでしこリーグは16人編成なんですね。

率直に言って、勝って然るべきゲームでした。メインスタンドから見ていましたが、前半はピッチの右半分、後半は左半分でほとんどのプレーが展開されてましたんで、試合は圧倒的にジェフペースだったのです。決定機も何度となく作り、シュートも多く打っていたのに、結局最後までゴールネットは揺れませんでした。なんというフラストレーションの溜まる試合だったことか。

たしかに新潟のGK一谷は相当に当たっていました。1対1のピンチやミドルレンジからの巻いたシュートなど、枠に飛んできた鋭いボールを少なくとも4度弾き出し、ジェフのサポーターに何度も頭を抱えさせました。バックラインもしっかり統率されていて、ボールホルダーに対して常に複数人で対応しプレーに余裕を与えない。そんな状態で無理やり中央に入れたところで、跳ね返すのはわけないですわな。真ん中はちゃんとゾーンを組んで守られていたので、新潟の狙いは明らかでしたね。とにかく「菅澤と深澤のツートップには絶対に仕事をさせない」ということで、それは徹底されていました。

新潟が中盤センターをギッチリ締め付けてきていたので、ジェフはどうしてもサイドに逃げて攻めていく形になります。サイドバックが高いポジションを取ったことで、サイドアタックそのものはうまくいっていました。ただ、速いテンポでサイドを駆け上がっても、中央の押上げがどうしても遅いのですよね。これは昨年見たときから変わっていないんですが、いざラストパスを送ろうとしたときに、ボックスの中にジェフの選手が1人しかいないのに対して、新潟の選手が3人くらいいるんですよ。これではさすがに分が悪い。思い切って突っ込んでこれる選手や、ハイボールに絶対の自信を持っている選手がいれば話は違うんでしょうが、あいにくジェフレディースにはそういう選手がいませんでした。もったいなかったですね。

それでも、菅澤優衣香川村優理が加入した効果は絶大だと感じました。

中央でゲームメイクを担う川村優理は、広い視野と周りを活かすパスセンスを併せ持った選手で、ミドルサードからジェフの攻撃のスイッチを入れる大心臓。運動量は多くありませんが、身のこなしも軽やかでスルスルと相手を抜いてしまうし、カバーリングやサポートのセンスもいい。優理さんが攻撃のほうにエネルギーを割いてくれる分、相方の柳井さんがアンカーの役目に専念できるのが大きいですね。インサイドハーフはとにかく役割分担が肝心ですし、ここがしっかりしていればチーム全体のバランスがきちんと整うわけです。昨年のレギュラーだった保坂さんが大ケガをして離脱している状況ですが、保坂さんはまたタイプの違った「飛び出す」タイプのボランチなので、さてどういう構成にするでしょうね。

ストライカーの菅澤さんは、まずもう見た目がすごい。1人だけガタイが全然違うんですわ。女子ではちょっとレベルの違いフィジカルを活かして、強引にボールを運んでゴールを強襲するプレーが持ち味ですね。1人で2人くらい相手にできちゃうくらいの強烈な個性の持ち主ですが、周りがちょっとそれに頼りすぎてしまうきらいはありました。菅澤さんが相手をひきつけたところに、深澤さんや筏井さんが飛び込んでフリーで狙っていくということもできるはずなんですけど、まだそこまで意思の疎通ができていないようです。

新加入選手でいうと、シーズン序盤に加入した"アンクラスの至宝"川村真理もいますね。彼女は足元のテクニックがずば抜けていて、前半は右、後半は左をズバズバと切り裂いておりました。このテクニックは魅力だな。規模は違いますが、プレースタイルとしては香川真司乾貴士に近いですね。つまり、典型的な「使われる」タイプの選手。近くに自分をうまく使ってくれる選手がいないとなかなか良さを出しにくい。もちろん相手関係によっては自分一人で状況を打開してしまうことも全然可能だと思います(それだけの能力はあると思う)が、そうなると今度は周りが置いてけぼりになってしまうんですね。アンクラスと違ってジェフでは「真理さんのチーム」になることはまずないと思うので、そこでどうやって自身の良さを出すか、また引き出してもらうかというところは葛藤することになるかもしれません(そういう悩みどころのあり方も、ユナイテッドに移籍した香川に似ていますよな)。

試合の終盤、70分を過ぎたころになると、能力の高い選手とそうでない選手のミスマッチをが目につくようになってきました。明らかに走れなくなって判断力が鈍り、一つひとつのプレーが雑になってしまう選手がいる一方で、前半と変わらない精度を維持して、しっかりとプレーを続けていける選手もいる。両者の完全に歯車が離れてしまってプレーが単調になり、最後は思うように前に出られなくなっていました。菅澤さんあたりはかなりイライラしていたように見えましたね。なんでもっとがんばれないんだ!って思ったはずですよ。でも、それが今のジェフレディースの精一杯でもあるのです。

補強の面では、ジェフレディースなでしこリーグで今季一番成功していると思います。これだけのタレントを一気に揃えられるチームはそうはありません。それなのに、成績面では9試合で10ポイントと全くの期待外れ。以前から在籍している選手は我慢することを知っているでしょうが、新加入選手はそうではない。シーズンの半分を終えたタイミングで中断に入りますが、遅かれ早かれチーム内で衝突は起こるものと思います。監督のジャンボさんはアマチュアリズムの塊のような人なので、「プロとしての対価を受け取らない中で、自分たちは何ができるのか、どこまで気持ちを出せるのか」という部分を強く求めると思うのです。そこで、理想論と現実とのギャップが出てくる。そういう衝突が起きたときに、緩衝剤になれる人がいるのか、あるいは双方がうまい妥結点を見つけられるのか。

「雨降って地固まる」となれば万々歳。ややもすれば空中分解もあり得るのではないかな。そうなってほしくはないですが。ジェフレディースの将来を左右する重要な時期に来ているような気がします。

さてさて、この試合を見て、僕は今年のレディースの"推しメン"を決めましたですよ。

背番号2、レフトバックでフル出場した上野紗稀さんです。レッズユースから新加入したまだ18歳の選手で、4月のU-19女子代表(いわゆる"ヤングなでしこ")の合宿にも召集された有望株です。もともと千葉出身で、浦和のユースチームに引っ張られて修業したあと、トップ昇格せずに千葉に戻ってきた形。名門チームを選ばずに地元を選んでくれるなんて、嬉しいことですねぇ。

154cmとかなり小さいですが、技術は確かなものを持っています。とりわけ縦へオーバーラップする積極性には目を見張るものがあって、前半は前の筏井さんとうまく連携を取って何度もアタッキングサードに顔を出しました。左脚のキックもかなり巧くて、ボックス内に精度のいいクロスを何本も供給していました。あれはもっと生かせるようになるといいな。

後半に真理さんが左にまわってからは、スタイルのミスマッチもあってポジションを上げられませんでしたが、しかしあの小さい体で90分しっかり走りぬきましたんでね。あれだけ上下動を繰り返してなお余裕があるのいうのはすごいわ。そりゃ18歳でもレギュラーナンバーもらえるわけだ。もともとレフトバックのレギュラーは細川さんの定位置だったわけですが、今では実力でそれを奪い取って、細川さんはベンチにも入れないという状態。ジャンボさんも上野さんの実力を相当買っているようです。

あとね、あの子は所作の一つひとつがとにかく全部かわいいんですよ。小動物的なかわいさというのかな、例えるならハムスターみたいな感じなんですよねw ころころと首がよく動くし、大きな目で"にかっ!"と笑うのがもうたまらんのです。開幕2節目の浦和戦をスカパーで見たときからちょっと気になってはいたんですが、もう完全にオチてしまいました。いやー、まいったまいったw

今季はもしかしたらもうレディースの試合は見にいけないかもしれませんが、たまにスカパーでやってくれたりもするし、結果くらいはちゃんと追いかけようかなと思います。秋以降にうまく都合がつくといいんですけどね。もう1試合くらい見に行けるといいけどなぁ。