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がんばりすぎずにあるこうや。

J2第14節 ゴールのためのゴール

2012 Jリーグ Division 2
第14節 ジェフユナイテッド市原・千葉○6 - 1●FC町田ゼルビア
6位(勝点24)→4位(勝点27)

当日は他の用事があって野津田には行けなかったので、出先でスカパーオンデマンドで見ておりました。twitterでは楽しそうな野津田レポートがわんさか届いていて、やっぱり行きたかったなーと思ったw 中継はなるべくちゃんと見るようにしてたんですが、音声を消していたしいろいろとあって飛び飛びになりがちだったので、あらためて録画したものをじっくりを見返してみました。そしたら当初とはだいぶ印象が違って、これはこれは、と。

まずスタメンです。GKは岡本。バックスはいつもの4人、大岩、竹内、山口智、武田。ボランチは今回は佐藤健太郎伊藤大介の組み合わせ。2列目は、右に田中佑昌、左に深井、中央に兵働。最前線は藤田です。ベンチには佐藤勇人が10試合ぶりにメンバー入り。町田也真人も久しぶりの登録になりました。一方、ここ5試合連続して出場機会を得ていた大塚翔平が今回はベンチを外れています。

あらためて見返してみると、ゲームの主導権を握っていたのは終始町田だったんですね。全体的なポゼッションも、おそらく町田の方が上でしょう。ボールを持つと、どんな状況でもまずつなぐことが最初の選択肢になる。タテにぼーんと蹴っちゃうってのはないんですね。センターバックからサイド、ボランチ、ワイドと丁寧に丁寧にボールをまわして、相手のバックラインがちょっと高くなったりバックスの間にギャップができたりしてスペースができると、すかさず鋭い楔を入れて、トップの平本や鈴木孝司が飛び出してくる。やってるサッカーのスタイルとしては、バルセロナを頂点としたポゼッションサッカーのお手本のようなやり方ですわな。これ、実際やられてみるとおっそろしいですね。竹内も山口も佐藤健太郎も、対応には相当苦労したんじゃないでしょうか。結局のところ、町田のシュート13本があまりターゲットに行かなかったことがすべてだったのかもしれません。ディミッチのフリーでのシュートとか平本の振り向きヘッドとか、絶対やられたと思ったもんよ。

ジェフの6得点という結果は、その町田のスタイルと相対したときに、ジェフのやり方がうまく「ハマッた」ってことでしょう。とりわけ、開始3分で先制ゴールを奪えたことが非常に大きかったと思います。田中佑昌と兵働と深井と、3人が粘って獲ったゴール。まさに「幸先良く」先制して、気持ちの面でも戦術の面でも余裕ができたということ。バックラインからゲームを作り始める町田のスタイルに対して、前線で過度に追い過ぎないようにして、ボールと選手を釣り出す。町田の最終ラインがハーフウェイライン近くまで出てくると、ボールがディフェンディングサードまで下りてきます。そこに猛然とプレスをかけてボールを奪い、速いテンポで相手のバックラインの裏やギャップにポーンと出す。あとは田中、深井、藤田が一気にそれを追いかければ、GKとの1対1の出来上がりです。先制点以外の5点は全部この形ですね。こういう形をジェフばかりが何度も繰り出せたというのは、それこそ個々の技術の差なんでしょう。

田中佑昌は、ようやく本来の"自分のカタチ"でゴールを決めました。中盤からの1本のスルーパスに反応してバックラインの裏へ突っ走り、トップスピードでゴールを強襲するこの形こそが、福岡時代に彼が何度も相手を陥れた田中佑昌の"十八番"ですよ。足下も柔らかくて、1対1で冷静にボールをコントロールする技術も持っています。ハットトリックは出来過ぎですけど、見ていて実に痛快でした。あの形をもっと作れるといいですね。幸いいいパスを出せる選手は揃っているわけですから。

それから、藤田はあの栃木戦以来の久しぶりのゴールになりました。1点目は思い切ったダイレクトのボレーショット、2点目はクイックリスタートに反応した冷静なゴール。本人も大満足の2ゴールですね。試合後もいい笑顔を見せていました。栃木戦以来ちょっとスランプに入りかけて、なんとかそれを振り払おうとがんばっていましたが、これでもう何も心配はいらないでしょう。やっぱりフォワードにはゴールが一番の良薬だな。

最近けっこう思うことなんですが、ポゼッションサッカーといえば2010年に江尻さんが目指していたことと同じなんですよね。その時期にサッカージャーナリストの西部謙司さんが指摘していたのが、「ジェフが点を獲るためには、先制点が必要」ということ。特にJ2のチームの場合、ガッチリと引いて守備の形を形成して戦うチームが多いので、ポゼッションサッカーを展開するためのスペースがなかなかできません。スペースを確保するには相手の守備陣に前に出てきてもらわなきゃいけないわけですが、釣り出しのためには「相手が攻めざるを得ない状況」を作り出すことが必要、つまり先制ゴールが必要だということでした。

「点を取って勝つためには先制点が重要だなんて、ニワトリとタマゴの関係みたい」と西部さん本人も言っていましたが、実際問題そうなんですよね。岡山戦や富山戦は、引いた相手に対して有効な手段を見つけられなかったが故にドローで終わらされてしまったわけだし、横浜戦や徳島戦はいずれも比較的早い時間帯で点を獲れたから、ジェフの志向するスタイルを存分にピッチで表現して追加点も奪えた。今季は守備が非常に硬くて、水戸戦や愛媛戦のようなウノ・ゼロゲームもできていますが、本来やりたいのはピッチ上の主導権を完全に掌握するサッカーでしょう。引いた相手に対してどう先制点を獲るか、そのやり方は今後ブラッシュアップする必要があると思います。

で、次はおそらくガッチガチに引いて守りを固めてくるであろう熊本が相手です。今回みたいにはいきませんよね。高木監督もしっかりウチを研究して臨んでくるでしょうから。そういう相手にいかにして先制点を獲るか。それになんといってもホームゲームです。この流れが続く限りは、勝てるだけ勝っていきましょう。

[J'sGOAL]【J2:第14節 町田 vs 千葉】レポート