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がんばりすぎずにあるこうや。

なでしこ第10節 目に見える成長

プレナスなでしこリーグ2013
第10節 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース○2 - 0●浦和レッドダイヤモンズレディース
7位(勝点10)→6位(勝点13)

トップの天皇杯をすっぽかして、レディースの試合を見に駒場まで行ってきました。あいにくの雨で、駒場は屋根があるといっても申し訳程度にしかついていないので、雨を避けようとするとただでさえ遠いピッチがさらに遠くなっちゃって大変です。風もそれなりに強く吹いていたし、途中本気の土砂降りにもなったし、コンディションは非常にタフでした。しんどかったろうなぁ。

スタメンです。GKは山根。バックスは右から、千野、小川志保、高橋、上野。ドイスボランチ川村優理とケガから復帰した保坂。右ワイドに川村真理、左に筏井を置いて、深澤と菅澤のツートップです。6月のリーグカップで負傷した櫻本の代役として、本職はストライカーの小川がコンバートされているんですね。その影響で、リザーブにアタッカータイプのプレイヤーが1人もいません。

これまで見てきた女子サッカーの試合に比べて、ずいぶんと時間が早く過ぎたなーという印象でした。女子サッカーは男子のそれに比べて展開が単調になりがちで、またスピードも劣るためにプレーエリアがどうしても中盤センターに寄ってしまいます。なので、見ている側の体感時間が非常に遅いという印象があったんですが、今回はまったくそれを感じさせませんでした。ルーズボールへの素早い反応、縦への速いカウンター、効果的なサイドチェンジを含むピッチをワイドに使った攻防と、スピード感のあるサッカーを見せてくれました。なでしこリーグ全体のレベルが底上げされてるってことなんでしょうか。そうだとしたら素晴らしいことです。

前半はお互いに押し込む時間帯があったものの、決め手を欠いてスコアレス。ゴール前の混戦からボールをねじ込むだけのしぶとさは、まだまだ足りないようです。ジェフは、テクニシャンの真理さんを右において相手を吊りだす一方で、左ではスピードスターの筏井さんが空いたスペースを一気に強襲するという作戦。中央に菅澤さんという絶対的なターゲットがいるので、縦のロングボールも横からのクロスも相手の脅威にはなっていたと思います。筏井さんもよく体を当ててボールをおさめて周りのサポートを促していましたが、いかんせんこのサポートが非常に遅かった。結局、1人で浦和のDF数人を相手にするような格好になってしまって、せっかくのワイドのスペースを有効に使うことができませんでした。センターを押し上げと、個の能力に"頼りすぎる"部分は相変わらずの課題ですね。こういった部分の歯車がうまく噛み合ってくれば、もっとチームとして強くなれると思います。

後半も、序盤こそ中盤でのミスが続いてボールの奪い合いになりましたが、60分くらいからしばらく続いた「ジェフの時間帯」を見事にモノにしました。深澤さんのゴールは、菅澤さんが相手のミスを逃さすボールを奪ってボックス内に侵入し、こぼれたところを冷静に右スミに流し込んだもの。2点目は右CKからの菅澤さんのドンピシャヘッドです。この2点目は圧巻でしたね。筏井さんのプレースキックも精度がとても高くなっているし、菅澤さんのあの高さはやはり強力な武器ですよ。ジェフレディースにも高さという武器が備わったというのは、これから先の戦いを見据えても非常に心強いです。そのあとは浦和の出足が鈍ったことやジャンボさんの的確な選手交代も相まって、しっかりと試合をまとめての完封勝ち。いやぁ、2年ほど前には「手も足も出ない」なんて言われていたレッズレディース相手にこれほどのゲームができるようになったというのは、なんともあっぱれでありますよ。

個人的に印象に残ったのは、GKの山根さんと交代出場の安齋さんの2人です。
山根さんは、ちょっと見ない間にずいぶんと"頼れるゴールキーパー"に生まれ変わっていました。以前はロングフィードやポジショニングの面で不安定さが拭えなかったんですが、今回はキックのミスはほぼ皆無。バックスからのパスや緩いルーズボールへの対応にも何の不安もなく、見事に「守護神」としての役割を果たしました。終盤に、浦和の吉良にコースを狙った決定的な左脚のミドルを打たれたんですが、この場面でもしっかり体を伸ばしてボールをはじき出すビッグセーブ。本人曰く、ゴールの位置と相手の切り返しを見て、微妙に自分のポジションを修正したそうです。それほど冷静に状況を見られるようになっているということです。代表に選出された効果か、ジャンボさんはじめコーチ陣に相当鍛えられているのか。いずれにしろ頼もしくなっていますよ。
右のサイドハーフで交代出場した16歳の安齋さんは、35分間という与えられた時間をとにかく走って走って走りまくりました。この時間帯、ジェフの右サイドは浦和の中村や後藤に崩されるシーンが目立っていて、ジャンボさんはそれを見て単純な運動量の追加を狙って安齋さんを送り出したわけですが、見事にハマりましたね。安齋さんは技術的にもずいぶん成長していて、右サイドからカットインして浦和のDFを巧みなステップでスイスイと抜いていくのです。あれには驚いた。浦和に行きかけたリズムを強引にジェフ側に奪い返しましたからね。1年前はとにかく一生懸命に走ってもボールを追いかけるのがやっと、みたいなプレーしかできていなかったのに、立派にジェフのジョーカーになっています。当然まだ発展途上の選手。将来への期待は膨らみます。

そして!お目当ての上野紗稀ちゃんですが!

今回もレフトバックでフル出場。筏井さんの外を回ってぐーっとオーバーラップし、ゴール前に鋭いクロスを送るシーンも何度かありました。ターゲット不足や精度の問題もあってフィニッシュチャンスにはつながりませんでしたが、筏井さんや菅澤さんとのコンビネーションは変わらず良好のようです。クロスの精度はまだ改善の余地あり。ノンプレッシャーから蹴るならかなりいいボールを供給できるんですが、チェックを振り切ってスピードに乗ってのキックは、もうちょい、ですね。

目を見張ったのはディフェンス面です。以前よりもだいぶしぶとく、粘り強い守備ができるようになっていました。向かってくる相手アタッカーの勢いに押されてズルズル引き下がってしまうようなこともなく、的確にタッチラインに追い詰めてプレーの選択肢をつぶしていくしたたかな守備。スプリントでは分が悪いので、勇気をもって相手にアタックすること、相手の攻撃をディレイすること、そういう「できること」をきちんきちんとこなしている印象でした。着実にレベルアップしてますね。

18歳の上野ちゃんは、開催が決まった東京オリンピックの年には25歳。女子のサッカー選手としてはちょうど成熟期を迎えて、ポテンシャルを十分に発揮できる時期です。新しくなる国立競技場で、ジャパンブルーを着た上野ちゃんが日本代表の左サイドを疾走するのが楽しみです。期待してるよー!

なでしこリーグは残り8試合。前半戦のつまずきによってリーグタイトルは現実的なものではなくなってしまいましたが、年末には皇后杯がありますからね。そこに向かってチームの結束を強めて、今年こそ大宮で歓喜の歌声を響かせようじゃありませんか。

スタジアムにクラブのエンブレムが掲げられているってのは、やっぱりうらやましいなぁ。