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がんばりすぎずにあるこうや。

皇后杯3回戦 ハッピーバースデイをうたって

第37回皇后杯 全日本女子サッカー選手権
3回戦 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース○2 - 0●日体大FIELDS横浜

皇后杯は毎年地方参りになるわけですが、しかし今年は2回戦から準々決勝まで、ことごとく遠いほう遠いほうへ振れてしまいました。見るほうとしてはかなりキツイ!しかしこの3回戦はどうあっても現地に行くと決めていたので、行ってきましたよ広島!海沿いのスタジアムなので寒いかと思いましたが、むしろ陽射しが強くて暑いくらいでした。

日体大はその名の通り大学チームですが、なでしこリーグ2部に所属して今季3位になった強いチームでもあります。昨年は1部昇格まであと一歩というところまで肉薄し、女子インカレではここ10年で5回優勝している大学サッカー界随一の強豪校。そういうわけで、ちょっとでも油断するわけにはいかないと、三上監督は主力メンバーを惜しみなくピッチに送り出しました。2週間前のリーグ最終戦と全く同じ並びでスタートです。

試合は終始ジェフペースでした。センターバックボランチの4人からしっかりとビルドアップをスタートして、サイドへの展開からクロス、バイタルエリアにクサビを入れてフィニッシュ、あるいは中距離からのミドルショット、いろいろと手を変え品を変えて日体大のゴールを狙います。攻撃の形はちゃんと作れていて、場面場面でどうやってフィニッシュまで持っていくかというイメージは、全員が共有できていました。セカンドボールへの対応やスペースのカバーリングも遅滞なく、最後まで攻めきることもできていました。菅澤さんの高さ頼みという印象もなくて、ハイボールと平面サッカーを組み合わせた多彩なパターンを繰り出せていたのは好印象です。

でも、結局前半は得点を奪えずに終わりました。攻め手はジェフのほうがずっと多かったですが、日体大はそれに対応してしっかりと守備組織を整えて待ち構えていたのです。

日体大の守備は、基本的には誰が誰を見るというのが決まっています。これはジェフレディースのように基本的に「ポジションサッカー」になるチームに対しては、相手に合わせて自分たちのポジションをシフトしたとしても大きくバランスが崩れないので、非常に効果的な守り方です。4年生CBの阿部がラインとマークチェックをコントロールして、アンカーの三浦が相手の攻撃の勘所に最初のプレスをかける形。ボールホルダに直接圧力をかけることよりも、その次の手段を封じる、つまりパスやシュートのコースを塞ぐとか、ゴール前でしっかり相手FWに張り付いてターゲットを狙わせないとか、そういう部分に重きを置いていました。強烈なシュートに対しても勇気をもって飛び込んでブロックし、常に相手の前に入り込んでラストパスを跳ね返す。実に基本に忠実なディフェンスです。今季2部リーグ27試合でわずか29失点という堅守の真骨頂を見た気分でした。

8人が自陣に引いてしっかり人数をかけて守りを固め、ジェフのバックラインをハーフウェイまで釣り出す。そうしてボールを奪うと、正確な中距離フィードを背後に入れて、そこに植村や島村がスピードで相手をぶっちぎる。単純ですが、徹底されています。ジェフは日体大のアタッカーが単騎で突破してくるのに対して常に3人以上で守っていたので失点はしませんでしたが、あの徹底ぶりは恐ろしかった。いつかやられるんじゃないかとヒヤヒヤしました。

中央を切り崩す近接戦闘ではなかなか勝機が見いだせない。ならば残る手段は「飛び道具」です。ジェフの2ゴールはいずれもセットプレーで、瀬戸口さんの正確な右脚がそれを演出しました。真理さんの嗅覚と菅澤さんの高さ、深澤さんの愚直な反応速度が噛み合って、値千金のゴールをゲット。スタンドから見ていても実にきれいで気持ちのいいゴールでしてね、これほどの精度を本番で出せるのは、練習の成果に他なりません。リードを奪ってから試合終了まで長かったですが、しかしリズムを相手に渡すことなくシャットアウト勝利。アップセットは許しませんでした。

さて、ご贔屓の上野紗稀ちゃんですが。

左のサイドバックでフル出場。昨年の藤枝のようなこともなく、しっかり90分走り切りました。試合に出るごとにコンディションも上がって、プレーの精度も良くなっているように見えます。やっぱりサッカー選手は試合に出るのが一番のトレーニングですね。真剣勝負を経験するのが一番鍛えられるってことだ。

ほとんどジェフのワンサイドゲームになりましたんで、攻撃の意識を高く持って臨むことができました。深澤さんを追い越してドリブルを仕掛けることも多かったし、ミドルサードからでも躊躇なくゴール前にクロスを送ることもできた。相手のプレスがそれほど強くなかったので、いつもよりも自由にプレーできていたと思います。ドリブルは実に軽快で相手を抜いたあとの判断を冷静にできる余裕もありました。左脚のクロスも、スライス回転がかかってGKに飛んでしまうこともあったけど、でもインスイングがしっかりついてチャンスになることもあったし、精度自体は上向き、復活してきています。

守備はそれほど見せ場はなかったんですけど、スピードスターの植村相手にはちょっと分が悪かったかな。磯金さんにフォローしてもらいながら、それでも左サイドで相手を自由にすることはありませんでした。半身で振り切られて後ろから追いかける形になると、どうしてもやりづらくなっちゃいますね。まぁ、及第点ではあるかな。シャットアウトしたしね。

試合の2日前、11月20日が21歳の誕生日ということで、勝ってお祝いできて良かったです。プレゼントを渡そうとしたときの、あの嬉しそうな顔ったら、ね。あれにヤラレちゃうんだよなーw ついでに少し話もできまして、気分よく楽しくサッカーやってるみたいで安心です。ひさしぶりにU-23代表候補に召集されまして、今週は静岡で合宿です。ケガにはくれぐれも気を付けて、高倉さんにしっかりアピールしてきてくださいな。

それから、この試合ではもう1人見たい選手がいました。

日体大の背番号14、DFの大賀理紗子ちゃんです。ジェフレディースU-18出身の1年生で、ジェフ在籍時の2011年にはU-14代表の海外遠征にも召集された経験の持ち主。昨年はジェフU-18で皇后杯本選を経験し、チームでは副キャプテンも務めていました。今季から地元横浜の日体大に進学し、1年生ながらファーストチームのセンターバックで定位置を獲得した逸材です。

167cmと恵まれた体格で、日体大の守備のど真ん中に君臨。フィジカルを活かして相手FWにしっかり身体を当て、自由に前を向かせることはありませんでした。セットプレーでは現役A代表の菅澤さんをマンマーク。基本のマッチアップも菅澤さんのマークを任されて、高さで強引に競り勝つより、ボールを持たれても絶対に自由にさせない守備を心がけ、それを見事に完遂しました。2失点目のシーンでは、瀬戸口さんのボールに対してちょっとだけ反応が遅れて菅澤さんを半ばフリーにしてしまったのが悔やまれるかな。しかし菅澤さん自身にはゴールを許さなかったわけだから、そのポテンシャルや目を見張るものがあります。

対人守備面ももちろんですが、中距離のフィードの正確さにも驚きました。不安定な体勢で膝のあたりにあるボールでも、しっかりと足にヒットさせて正確に植村のところに飛ばすんですよ。何度やってもほとんどブレがない。ヘディングで味方の足元にきちんと落とすこともできるし、ビルドアップの足掛かりとして最終ラインにやってほしいことをことごとく正確にやってくれます。相手の二次攻撃を防ぐこともできるし、これは心強いね。リーグ2位の失点を誇る日体大センターバックとして、実力は本物です。

ジェフU-18在籍時も横浜から東京湾を1周して通っていたそうで、確かにそれは大変だし、地元でプレーしたい気持ちもよくわかります。大学生の4年間トップリーグで経験を積んで、ジェフが本気で出戻り獲得を考えるくらいに成長してくれることを期待しています。折しも今日発表されたU-19代表候補合宿に、チームメイトの三浦とともに召集されました。4年ぶりの"代表復帰"。ポテンシャルは高倉さんも認めているということだ。3年後、本当にジェフに戻ってきてくれたらいいな。

試合後にはジェフレディースの"元締め"みーみさんや、昨年までアカデミーコーチだった柳井さんと談笑している姿も見えました。みんなお互いにちゃんと気にかけてるんだ。アカデミーの年代に過ごした場所ってのは大きい存在ですよね。

ジェフレディースは準々決勝に進出し、いよいよなでしこ1部勢との対戦になります。次の相手は新潟。今季のリーグ戦では3戦して1勝1分1敗です。ならばここできっちり決着をつけようではないか。次もその次も、その次も勝って、今度こそタイトルを獲ってやるのだ。