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がんばりすぎずにあるこうや。

なでしこ1部第2節 育成力の真骨頂

2016 プレナスなでしこリーグ1部
第2節 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース●1 - 3○日テレ・ベレーザ
2016/04/02(Sat.) 13:00 フクダ電子アリーナ
7位(勝点1)→7位(勝点1)

開幕戦に続いてのホームゲーム。ベレーザは昨年のチャンピオンチームですが、選手の入れ替えと若返りもあって、チーム状態はやや変化しています。もちろん核になる中心選手は健在なので根本的なポテンシャルは変わりませんが、ジェフレディースベレーザ相手には不思議といつも好ゲームができているので、期待半分でフクアリに向かいました。

ジェフはキャプテンの櫻本さんが欠場。コンコースや場外イベントにも姿を見せなかったので、体調不良かあるいは重症か。大事なく次節までに復帰してくれるとよいのですが。いずれにしろバックラインの並びは変更せざるを得ず、ここには若林美里さんが起用されました。一方で、最前線にはエースの菅澤さんがケガから復帰。チャンピオンチームを相手に一番の得点源が復活したのは、何とも心強い。

美里さんは、本職の右サイドバックではなくセンターバックで起用されました。つまり櫻本さんのポジションにそのまま入ったわけですね。定石なら千野さんが真ん中、美里さんが右サイドになるんですが、ベレーザの左サイド、長谷川と有吉を警戒して、ここを千野さんにしっかり抑えてもらおうという意図で、いつもと逆の並びになりました。

結果として、これ自体は上手くいったと思います。長谷川のテクニックはやはり素晴らしくて、ときに中央にも入りこんでそのスキルを見せつけていましたが、有吉のオーバーラップと鋭いクロスはほとんど抑え込むことができました。有吉が上がってくればその裏には当然大きなスペースができるので、そこを使ってカウンターを仕掛けるにも千野さんのほうが向いていた。その意味で采配は"当たった"とも言えます。

しかしベレーザの中盤には、こちらの想像をはるかに超える成長を遂げた新「10番」、アカデミー出身の籾木結花がいたのでした。岩清水、阪口、田中美南と並ぶ盤石のセンターラインにあって、バイタルエリアで攻撃のタクトを振るう若きレジスタは、先輩に臆することなくチームを指揮し、攻撃陣を操るパスを繰り出し、自信もそのテクニックをいかんなく発揮してジェフのゴールを襲い、事実2ゴールを奪って見せました。3点目となったミドルショットは、もう見事の一言。ジェフの守備陣は、試合を通じて彼女に翻弄されっぱなし。瀬戸口さんや深澤さんのプレスはほとんどかいくぐられ、美里さんは存在を消され、磯金さんのフォローも間に合わない。153cmと小柄な選手なのに、背中の10番が実に大きく見えましたよ。ベレーザにとっては何とも頼もしいことでしょう。

ベレーザの2列目を構成する4人、中里、隅田、籾木、長谷川は、全員がベレーザの下部組織である日テレ・メニーナの出身です。中学生のころからベレーザの"イズム"を骨の髄まで叩き込まれて、今なでしこリーグのピッチに立っているわけです。これでまだ全員ハタチそこそこだってんだから、まったく末恐ろしい。ヴェルディは男子のアカデミーの評価が非常に高く、有力なJリーガーを何人も輩出していますが、女子のアカデミーも負けず劣らずの育成力を持っています。長い間この実力を維持できているというのは本当にすごい。日本サッカー界全体として、この育成組織に学ぶ部分はとても多いのではないかな。

前半はやられっぱなしのジェフレディースでしたが、2失点目後の選手間の緊急ミーティングやハーフタイムでの指示、選手交代などを経て、後半はそれなりに攻め手も増えました。攻撃的な4-1-4-1システムからボランチ2枚の4-2-3-1にシフトしたあたりで守備も飛躍的に安定して、ベレーザに決定的なチャンスを与えなかった。なので、前半のシステム的なミスマッチが何とも悔やまれますね。複合的な要因が重なったとはいえ、もったいなかった。菅澤さんがトップコンディションでなく、その強みを封じられてしまったことも痛かったです。ただ、深澤さんが相手の隙を逃さず一矢報いたのは、ジェフレディースにとっては僥倖。次に向けて、しっかり課題を克服していかねばなりません。

さて、ご贔屓の上野紗稀ちゃんですが。

この試合も左サイドでフル出場。本職のレフトバックと、試合最終盤には1列目のアタッカーもこなしました。ベレーザの強力な攻撃陣を相手に何とか踏ん張ろうと必死でしたが、チーム全体がアンバランスになってしまって、どうにも良さを発揮しきれず。

試合を通じてほぼ守備重視。前線にオーバーラップできる機会もあまりなく、中里とのスプリント勝負や対人守備に追われました。これはもうしょうがないね。アンカーがほとんど機能できませんでしたから、両サイドがフォローに入らなきゃいけないし。隣が磯金さんなので、左サイドから決定的に崩されることはありませんでしたが、しかし早々エネルギーを使ってしまいました。

サイドハーフとしてのプレーは、追加タイムを含めておおよそ7分というところ。後ろを香奈絵さんに任せて、前を向いて菅澤さんや小沢寛ちゃん、みっつーへのクロスボール供給を狙いましたが、ベレーザもしっかり守備を安定させていて、なかなか奏功しませんでした。それまで守備にかかりきりだったし、ラストスパートで急に攻撃面で力を発揮しろとなってもなかなか切り替えもむずかしいよな。

ただ、起用のされ方を見ていても、上野ちゃんの左脚への期待値は高いのだなと思います。終盤の役割もそうだし、セットプレーでは普通なら瀬戸口さんが直接ゴール前に放り込むところを、ひとつずらして上野ちゃんがクロスを入れるシーンもあって、実戦で使ってもらえるレベルになっている。あともう少しの精度とパワーが備われば、左のキッカーとしてのオプションを任せてもらえるかもしれない。地道にコツコツとトレーニングすることが大事ですね。

ホーム2試合で1ポイントは、正直かなりさびしい結果です。開幕スタートダッシュに失敗したことは痛手ですが、シーズンはまだ長い。浮き彫りになった課題を克服すべく1週間でいい準備をして、次のアウェイでしっかり勝って帰ることに集中しましょう。まだまだ、これからよ。