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がんばりすぎずにあるこうや。

J2第9節 「J1仕様」と「J2仕様」

2011 Jリーグ Division 2
第9節 栃木SC○1 - 0●京都サンガF.C.

29日に日立台に行ったわけですが、30日は今度は宇都宮のグリーンスタジアムに行ってまいりました。この日に関東で見られる試合が、ここか味スタしかなかったんですよね。味スタは今年は2回も行くし(連戦だけど)、試合以外の目的もあったので、この日はクルマでグリスタへ。

グリスタはバックスタンドの改修工事が終わり、鉄筋コンクリート造の立派な観戦席が出来上がりました。座席のつくりは、大宮のNACK5スタジアムに似たベンチシート構造。フルキャパシティは18025人になったそうです。3月の地震の影響でアウェイ側サイドスタンドが完全隔離されていて、京都のサポーターにとってはスタグルメなどの面で不便があったみたいです。1日も早く元に戻るといいのですが。

両チームのスタメンを振り返ります。栃木のGKは武田。4バックは右から、西澤、渡部、大久保、那須川。パウリーニョ鈴木修人が中盤に控え、右に水沼、左に河原。廣瀬とリカルド・ロボのツートップです。対する京都は、GKの水谷をはじめ、内野、アライール、森下、安藤の4バック。ダブルボランチに中村と中山、その前に加藤弘堅。そしてドゥトラ、久保、宮吉のスリートップという形。実際とはややずれているかもしれませんが、そのあたりはご容赦を。

試合は開始3分に、リカルド・ロボがスーペルなゴールを決めて、栃木が先制。セットプレー崩れからですが、ロボがボールを持った瞬間、バックスタンド中央部にいた僕にもシュートコースが綺麗に見えました。見えましたが、そのコースに寸分違わずバチッとボールを乗せてくるところが、リカルド・ロボの"リカルド・ロボ"たる所以。この選手がチームに残ったというのは、栃木にとって非常に大きなものだと改めて思いました。ジェフも今季対戦しますし、やっぱり要注意だな。

率直な試合の印象を言えば、このロボのゴールシーン以外はほぼ互角の戦いでした。松田体制3年目の栃木は、堅牢なバックラインを敷いた粘り強い守備を、90分間途切れることなく続けました。攻撃のビルドアップは中盤のパウリーニョに任せ、水沼と河原のスピードと足下の技術、ロボのフィジカルとキープ力、廣瀬の的確なフォローをそれぞれに発揮させた、実に現実的な"J2サッカー"。選手それぞれの役割をきっちり明確にして、個々人がその能力を100%発揮できるようにしたスタイルです。3年目を迎え、来季のJ1昇格を現実的な目標として掲げる栃木にとって、今年のJ2を上位で戦い抜くためには、徹底的に「J2で勝つため」のサッカーをする必要があります。それが、松田監督が作り出した、このサッカーです。

京都は、個々の技術や能力では、栃木を圧倒的に凌駕していました。昨季J1で下位に甘んじたとはいえ、選手層を考えれば、J2での優位はゆるぎないものに見えます。この試合も、ボールポゼッションやミドルサードでのパスワークでは完全に栃木を上回っていたのは明白。ドリブルの際の足の使い方や、中盤からサイドへ展開するときのパス回しのスムーズさなど、細かいところで「やっぱりうまいなー」と素直に思う場面がたくさんありました。武田がすんでのところではじき出した加藤のフリーキックも、お見事の一言。ですがその京都ですら、栃木のバックラインを切り崩して得点を奪うにはいたりませんでした。

今季大木武監督が就任した京都は、当然ながら「1年でのJ1復帰」を掲げてチームを再構築しています。個々の能力と高度に組織化されたポゼッションサッカーでゲームを支配して、「強いサッカー」で他を圧倒しようとするサッカーを展開しています。これはつまり、J2である意味「踏み台」として利用してチームの熟成度をできるだけ上げ、J1に復帰した際に、J1チームと十分戦えるだけのチームを作り上げようとしているということです。90分間試合を見ていて、僕にはそう見えました。

J1を目指すチームにとって、J1に昇格した際の戦いを見据えて地均しをしようとするのは、大変正しいことです。特に京都の場合、これまで「エレベータークラブ」と呼ばれてきたように、J1とJ2を行き来しています。ですから、次にJ1に昇格した際にはしっかりと定着できるよう、今からそのための準備をしている。その意図は良くわかります。何を隠そう、ジェフが昨シーズンにやろうとしていたことですからね。

ですが、J1に昇格するためには、当然その前にJ2での戦いを全うし、J2のチームに打ち勝って上位に行く必要があります。そのために必要なのは、「J1のための準備」ではなくて「J2で勝つためのサッカー」。J1のサッカーとJ2のサッカーの間には、かなり大きな隔たりがあるんですよね。J1仕様のサッカーでJ2を戦い抜いて昇格した例がないわけではないですが、J2にはJ2の戦い方がある。やっぱり、きちんとそこにアジャストしたリアリスティックなサッカーが、必要なんですよ。シーズン始まって間もないこともあるでしょうが、この日の京都のサッカーは、昨シーズンにジェフにとてもよく似ていました。つまり、このままだと失敗する。

とは言え、ハマれば非常に強力なサッカーを展開することは明白です。再開緒戦で非常にいい動きを見せた久保を中央において、その脇にドゥトラと宮吉というタレントあふれる人材をそろえたスリートップは、2列目からの鋭いパスワークや、バックラインから始まるビルドアップによって、大変な攻撃力を発揮します。それこそ、今のJ2で太刀打ちできるチームは少ないでしょう。中山が巧みに両サイドを使い、攻撃のスイッチを入れる。現在ケガで離脱中の工藤浩平秋本倫孝が復帰してきた際には、これは驚異的な布陣が敷けることでしょう。後半に登場するや、前線のバランスを一気にぶっ壊してしまったディエゴも、多きサッカーを理解してスタイルにフィットすれば、当然強力なアタッカーになる。おおお、後半戦が実に恐ろしい。

松田監督のサッカーも、大木監督のサッカーも、理念と哲学がしっかり見えるすばらしいものです。この2チームに打ち勝つのは、なかなか骨が折れますよ。でも勝たないと上にいけないわけなので、しっかり対策を練って、いざ相対したときには、恐れずに立ち向かわねば。絶対、J1に行くんだから。

試合後、宇都宮の洋菓子店「クイーン」に行ってきました。これが「試合以外の目的」。ガトーショコラをいただいてみましたが、しっかりとした濃いチョコレートの風味が、とても僕好みでした。おいしかった。10月にジェフの試合でグリスタに行ったときに、また行っちゃおうかなw

[J'sGOAL]【J2:第9節 栃木 vs 京都】レポート