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がんばりすぎずにあるこうや。

J1第14節 サッカーをさせない強さ

2011 Jリーグ Division 1
第14節 横浜F・マリノス●0 - 2○柏レイソル

ちょうど土曜日の予定が空いたので、日産スタジアムにお邪魔することにしました。日産スタジアムは、ホーム自由席のチケットでバックスタンドに入れるんですね。ゴール裏からはピッチが大変見づらいことで有名な日産スタジアムですが、さてバックスタンドからはどうだろうということで、今回はバックスタンドの2階席から見てみることに。

両チームのスタメンを振り返っておきます。ホームの横浜は、GKに飯倉。バックラインは、昨季まで柏に所属していた小林祐三以下、栗原、中澤、波戸の4人。兵藤がアンカー気味のポジションにいて、右に中村俊輔、左が小椋、トップ下に谷口。ツートップに渡辺と大黒です。対する柏は、GK菅野。センターバックが今回は増嶋と橋本のコンビで、右に酒井宏樹、左にジョルジ・ワグネル。大谷と栗澤がダブルボランチの形で、大津とレアンドロ・ドミンゲスが2列目。北嶋と田中順也のツートップでスタートです。

前半の横浜はアンカーの兵藤がいまひとつ役割を果たせず、中盤での歯止めが利かない状態。センターバックの前にぽっかり空いたスペースを柏にいいように使われ、右に左に展開されて、クロスとシュートの雨あられ。バックラインの4人に異常な負担がかかっていて、ついていくのがやっとというか、結局ついていけなくなってしまった結果が2失点なわけですが、意思の疎通も上手くいっていなかったようだし、まるで不安定でした。攻撃にしても、中村や小椋はボールを持てるんですが、そこから最前線へのパスがまったく"優しくない"。ツートップが活かしきれてないなと思う場面が何度もありました。中澤はリベロのようにボールを持ち上がって、大黒に縦パスを入れたシーンがありましたが、このパスのほうがよっぽどフォワードに優しい、次のプレーにつながるパスだったと思います。横浜の中盤は、ゲームを組み立てることがまるでできなかった前半でした。

後半に向けて、木村監督はツートップを小野とキム・クナンに入れ替えました。中盤の停滞感に問題があると思っていたので、僕はこの交代に疑問だったんですが、結果的にはある程度の効果を発揮しています。小野が若干下がり目のポジションを取って、谷口とツーシャドウのような形に。中盤の枚数を単純に増やしてプレッシャーを厚くし、またパスの選択肢を増やすことでボールポゼッションを高めることに成功しました。高さのあるキムをめがけたハイボールを多用するようになって、彼のポストプレーを活かせたことも奏功したでしょう。

ただその代償として、ショートカウンターからサイドに展開して攻めきろうとしても、ボックス内に人が入るまでに時間がかかるようになってしまい、カウンターが完成しなくなってしまいました。キムはもともと飛び出すタイプではないし、小野も"感性のストライカー"ではないようで、ゴール前のチャンスエリアを瞬間的にとらえてフィニッシュへ持っていく、ということができずじまい。最終盤に交代出場の狩野健太が、栗原のクロスからのキムの落としに反応してうまくフィニッシュへ持っていきましたが、この形を作るまでに85分もかかっているわけです。この形、つまり柏のセンターバックのギャップを突いたボックス内への飛び出しという形を、前半のうちから作ることができていればずいぶん展開は変わったでしょうが、それができなかった。最終的に横浜は16本のシュートを打ちましたが、枠外や緩い球が多くて、キーパーの菅野を脅かすようなシュートはほんの数本。後半はボールを持ちつつも、形を作りきれなかったというところでしょうね。

横浜目線でマイナス要因をいろいろ書いてしまいましたが、実際のところ横浜が悪かったというより、柏が横浜に良さを出させなかった、やりたいことをやらせなかった、と言ったほうが正しいかもしれません。センターバックは本来レギュラーである近藤直也パク・ドンヒョクが揃って欠場で、増嶋と本職でない橋本というスクランブル。ですが、特に増嶋はよく効いてました。ライトバックの酒井がぐーっと上がって攻撃参加している間は、その後ろのスペースをしっかりとケアしてピンチの芽を摘み取り、広い視野でディフェンディングサードをカバー。橋本も基本に忠実なディフェンスで安定感を見せ、両サイドバックが前に上がっても、2人だけできちんとバランスを保っていました。ボランチの栗沢と大谷も、センターのスペースを消しつつ使いつつ、横浜の攻撃的な中盤をぐいぐい押し戻す。2列目のレアンドロなども役割ははっきりしているんですが、距離感はしっかり保って前後に分断せず、全体のバランスが保たれたまま試合を進めていた印象でした。センターラインがこれだけバランス良く安定していると、攻撃も守備もそうそうブレるもんじゃありませんからね。柏の強さはここにあるんでしょう。

僕の周りにいた横浜のサポーターたちも、「いやいや、柏つよいな」「参ったな、うまくやらせてもらえない」と口々に言っていました。0-2とスコアは大きな差がつきませんでしたが、試合後にゴール裏からブーイングが飛び、横浜の選手たちが総じて俯いてしまっていたように、ゲームの中身としては横浜の「完敗」。5連戦の初っ端にキッツイ一撃をお見舞いされてしまいましたが、中3日でどうリカバーできるか、次の試合はメンタル面でも大事になるでしょうね。

さて、はじめてゴール裏以外から試合を見てみたわけですが、日産スタジアムのバックスタンド2階席は実に見やすいですね。ピッチの全体を視界に入れることができるし、それでいて先週の背番号もしっかり確認できるという絶妙の距離。日産スタジアムのビジョンは高精細で本当に綺麗で、これも大変見やすい。この席がゴール裏と同じチケットで手に入るというのは、かなりお買い得なんではないかと思いました。みなさんにも自信を持ってお勧めしますよ。

[J'sGOAL]【J1:第14節 横浜FM vs 柏】レポート