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がんばりすぎずにあるこうや。

J1第22節 ターニングポイント

2011 Jリーグ Division 1
第22節 ヴァンフォーレ甲府○3 - 2●浦和レッズ
甲府:16位(勝点17)→16位(勝点20)
浦和:12位(勝点27)→12位(勝点27)

甲府が国立でホームゲームを開催するということで、ちょうどJ1集中開催日でもありましたし、ちょうどいいと思って行ってきました。雨が心配される天気予報でしたが、幸い終了間際に過ごし振られたくらいで、ほとんど影響なく、久しぶりの国立観戦を楽しんできましたよ。

まずは両チームのスタメンを振り返っておきます。ホームの甲府はGKに荒谷。前節左サイドにいた吉田豊が今回は右のサイドバックキム・ジンギュが負傷欠場で、センターバックはダニエルと冨田大介。レフトバックに内山。ダブルボランチは山本と、今回は井澤が今季初先発。右に柏、左にパウリーニョの両サイドハーフと、ツートップは片桐とマイク・ハーフナー。対する浦和は、GKに加藤。高橋、永田、スピラノビッチ、平川というおなじみの4バック。鈴木啓太、柏木、山田直輝のトレスボランチ。右が田中達也、左が原口の両ウイング、中央にランコ・デスポトビッチ。4-3-3でスタートです。

今季の浦和のサッカーにあって、ほぼ唯一自らの強みを存分に発揮している若きアタッカー・原口元気の突破力に対抗するため、佐久間監督はライトバックに吉田豊を置いてマッチアップさせました。対人守備に定評のある吉田は、園能力を遺憾なく発揮して原口とがっぷり四つに組み合い、見事に完封して見せます。原口は、サイドでボール受けてから中央へカットインしてのフィニッシュ、という形が得意のパターンですが、カットインする段階で吉田がしっかりと構えて体を寄せ、原口のスピードを完全に殺して持ち味を出させませんでした。甲府の右サイドバックは市川がレギュラーですが、市川の精度のいいクロスボールを犠牲にしたとしても、ここまで原口を抑え込めるのであればお釣りがくるレベルです。今回の試合にあって、吉田豊の果たした役割というのは非常に大きいものがありますね。マン・オブ・ザ・マッチ候補といってもいいのでは。

もう1人、MOM候補に推したい選手がいます。ツートップの一角に入った片桐です。トップとはいうものの、実際はフリーマンのように敵陣を縦横無尽に走り回りました。ポジションを固定せずに自由にプレーする片桐の動きを、浦和のゾーンディフェンスは捕まえることができずに、守備組織に綻びを作ってしまいます。前半の3得点は、浦和のバックラインと中盤、そしてセンターバックの間にできたギャップを、パスワークとパウリーニョの個人技、マイク・ハーフナーの高さで制したもの。ハーフナーがフリーでヘッドできていたこと、パウリーニョの突破にも浦和のカバーリングが後手後手になっていたことを見ると、甲府が浦和のバックスを「崩しきった」と言っていい3得点でした。試合終盤の片桐はさすがに運動量が落ちてしまいましたが、十分な活躍をしたんではないかな。

浦和に攻め手がなかったわけではありません。中盤の柏木と山田直輝の連携を軸にして、主に右サイドから攻撃を組み立てていました。ライトバックの高橋峻希、ウイングの田中達也も絡んで、何度か中央へボールを供給したり、深い位置からゴールに迫ろうとしましたが、なかなかうまくいかず。柏木や山田が中央に入って、バイタルでボールを持てれば大きなチャンスもできたでしょうが、そういう形が作れませんでした。柏木は、FKを直接たたき込んで1点を返したものの、チームがなかなかうまく機能しないストレスもあってか、特に前半はかなりヒートアップしていましたね。

ペトロヴィッチ監督は「ツートップにしたい」という意図で、後半アタマに山田直輝マゾーラにスイッチしました。ですが、攻撃の起点になるポイントが柏木1人になってしまったことで、結果的に柏木の負担がものすごく増えてしまった。「使われることで活きる選手」が増えたところで、それを「使う」選手がいなくなってしまっているので、機能不全は加速してしまいます。マゾーラの軽快な身のこなしとコンパクトなフィニッシュは大きな魅力ですが、なおのこと山田直輝を下げてしまったのはもったいなかったな、と。63分にデスポトビッチエスクデロ・セルヒオに変え、このエスクデロが予想外に左サイドでがんばったことで、甲府のDF陣の余裕をなくし、それが後半の1得点につながるわけですが、いいときの浦和のサッカーではないなと。少なくとも、7月に埼玉スタジアムで見た浦和とは、ずいぶん違って見えました。あまりに満身創痍であると。

甲府は、前半からハイプレスをかけ続けたこと、2点のリードがあるということで、後半はちょっと余裕を出し過ぎたかなと思います。プレーが軽くなってしまって、中途半端にボールを奪われることが多かった。バックスが集中して何とか逃げ切りましたが、ああいうときのプレーコントロールは拙い面がありますね。佐久間監督はシステムのバランスを崩すことを嫌って、遅めの時間帯にアンカーの伊東と、片桐をダヴィに変えましたが、中盤と前線のリンクが取れなくなって、結果的に浦和に若干押し込まれるようになってしまいました。2つほどあった決定機を決めていればもっと楽にクローズできたでしょうが、それは次への課題でしょう。

佐久間監督は、「守備に力を入れるというよりは、ポゼッションを増やして攻撃の時間を多くし、相手に攻撃をさせないサッカー目指す」という趣旨のことを言っています。これは、昨年までの甲府のサッカーに照らせば実に的を射たコンセプトで、推進力のあるサイドアタッカーがあれだけ豊富にいるのに、これを活かさない手はありません。中盤センターに、バランス感覚のいいアンカーと、ボールを捌ける"レジスタ"タイプのボランチを置けることが肝要になりますが、今回山本と井澤は非常にいい働きをしたことで、中盤構成には一定のめどが立ったのではないでしょうか。交代戦術に関してはまだ掴みきれていない部分も見える佐久間監督ですが、チームコンセプトの浸透は早いでしょうし、コーチ陣や選手たちと密にコミュニケーションをとって掴んでいけばいいのではないでしょうか。

甲府は、この試合をターニングポイントにしなければいけません。慣れ親しんだ「甲府のサッカー」を思い出し、自分たちの強みを存分に発揮して、相手に"立ち向かう"ことに回帰しなければ。この試合で大きな自信をつけた選手もたくさんいるでしょうし、手ごたえをつかんだ選手も多いでしょう。戦力的には、余裕で残留を果たしておかしくないほどのメンバーが揃っています。この試合をきっかけにして上昇気流に乗り、大宮との4ポイント差をひっくり返してもらいたい。まだ今シーズンは12試合も残っているんですから。

「J1での戦いは厳しい」という"覚悟"は必要ですが、諦めるのはまだまだ早いよ。

[J'sGOAL]【J1:第22節 甲府 vs 浦和】レポート