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がんばりすぎずにあるこうや。

皇后杯決勝 悔しさの先に

第34回皇后杯 全日本女子サッカー選手権
決勝 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース●0 - 1○INAC神戸レオネッサ

わずか1か月程度の間に、これほどの悔しさを2度味わうことになろうとは、戦前には予想もしていませんでした。あともうほんのちょっとだったんですよ。タイトルに手がかかっていた、とまでは言わないけれど、本当に惜しいところまでいきました。サッカーというのは、かくも残酷なものです。

頂上決戦に挑んだジェフレディースのスタメンを紹介します。GKは船田。右から桜本、高橋、河村真理子、細川のバック4。インサイドハーフには保坂と柳井、右アウトサイドに清水、左は筏井。小川志保と深澤のツートップです。最近のジャンボ監督はリザーブにもGKをちゃんと入れているようで、山根恵里奈がベンチ入りしています。

A代表6人、U-20代表を2人、加えて強力な外国籍選手を3人抱えるエリート集団の神戸が相手ですから、苦戦は必至、どれだけ相手を抑えられるか、フルボッコも覚悟の上、というつもりでいました。逆に言うとそれだけ開き直っていたということで、どうやらそれは選手もコーチ陣も同じだったようです。小川さんは準決勝に勝った後のインタビューで「失うものはないので全力ぶつかるだけ」と言っていましたし、結果がどうあろうと今シーズンはこれが最後の試合。そういう吹っ切れた意識が、かなりいい方向に作用したように見えました。これほど熱くなれるゲームになるとはね。

この試合でジェフがとった戦術は、技術の差を運動量の差で埋めるというものでした。両サイドとツートップはとにかくがむしゃらに走ってボールを追いまくり、相手のボールホルダに常に圧力をかけてプレーの余裕を与えない。簡単に交わされてしまうことがあっても、1回ではあきらめずに食らいついていく。あとはボックスの中をしっかりと固めて待ち構えて、入ってきたボールを必死にかき出し決定的な仕事はさせない。そういうしぶとい姿勢を貫き通して、冷や汗をかきながらもゴールを守り続けました。攻撃では以上に高くセットされた神戸のバックラインの裏を意識して、スピードのある両ウイング、ゴールへの意識の高いツートップにボールを素早く展開して、速い攻撃で襲いかかっていく。攻撃でも守備でも、やり方が徹底されていました。そしてそれがけっこうハマッてたんですね。労を惜しまずに走り続けるというのは、サッカーをやるうえで一番の基本なのだなと、それがちゃんと根付いているというのは素晴らしいことだと思いました。素晴らしいチームになっていますよ。

9月にフクアリでのベレーザ戦を見たときには、ボランチの2人がまったくその役割を果たせていなくて先行きに大きな不安を感じたんですが、この試合ではまるで別人でした。柳井さんも保坂さんも気持ちの面で大きく変わったのか、しっかり相手を見ながら真ん中の危険なスペースを埋めて、澤とチ・ソヨンという日韓のNo.10を自由にさせませんでした。ポジションを守ってセンターバックと強い守備ブロックを形成し、テンポのいいボール捌きでジェフのリズムを作り出していました。保坂さんはドリブルで前に持ち込むこともあって、前半の左脚シュートは実に惜しかった。海堀のニアを完全に抜いたんですが、ポスト直撃でした。

チャンスの数も決定機の数も、神戸に全く負けていませんでした。それでもそういうチャンスを結果に活かせなかったというところに、「強い」チームになりきれないところがあるのだと思います。小川さんや深澤さんの1対1や、筏井さんが左から切れ込んでニアを狙ったシュート、細川さんのミドル。シュートの数は神戸と1本しか違わなかったんですが、枠に収められなかったりしたのはもったいなかった。そういうところの冷静さ、勝負強さというのは、男子トップチームと共通の課題なのかもしれないし、サッカーをやるうえで永遠に追及していくものなのかもしれません。

最後の最後、時計が91分20秒をまわったところでの失点は、本当にもったいなかった。こぼれ球がたまたま田中明日菜の前に転がってしまったのでした。けど、そういうある意味運のようなものを引き寄せるのも、強さの要素であると思います。それでも、まるまる90分間、あのチームをあそこまで追い詰めたんだもんな。リーグ戦での成績からすれば、大変意義のある試合でありましょう。

試合が終わったあと、深澤さんはずっと泣いていました。山根さんは底抜けの明るさで選手とサポーターを元気づけていました。この深澤さんの涙と山根さんの笑顔には、僕は大きく心を動かされましたよ。これほどの悔しさを味わったのは初めてだという選手も多いのかもしれない。でも、「悔しい」という思いは、もっと巧く強くなって次こそはタイトルを、という決意に変わるはず。もっと強くなってほしいと思います。プロがなんだ、代表がなんだ、全員ノンプロでもここまでやれるんだということを示した事実は、誇れることに違いないからね。日本のNo.2なんですから。

レディースもこの試合で今シーズンのすべての試合を終えました。清水さんと河村さん姉妹は現役を引退するそうです。お疲れ様でした。清水さんは、フクアリで挨拶をするときの「こんにちわぁー!ジェフレディースの、清水由香でぇーす!」という甲高い声が、とても印象に残っています。来年も最低1試合はレディースの試合を見に行きたいですね。このチームが強くなっていくところを見ていきたいと思います。